講演情報

[P19-4]右側臥位で肛門部と膣後壁を直視下で切離することで安全に切除できた子宮浸潤を伴う高度進行下部直腸癌の1例

内山 周一郎, 高屋 剛 (串間市民病院外科)
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症例は53歳女性で下痢と便秘、血便を主訴に近医消化器内科を受診。大腸内視鏡検査で下部直腸に2型腫瘍を認め閉塞しかかっていた。当科を紹介されまず横行結腸右側に人工肛門を造設した。CTおよびMRIでRaからRbにかけて75X72X95mm大の腫瘍があり左前方で子宮頸部に浸潤していた。直腸間膜内に2個腫大リンパ節を認めたが、遠隔転移や側方リンパ節転移の所見は認めなかった。大腸内視鏡検査でRbに下端を有する腫瘍があり口側へ鏡体が通過しなかった。生検でGroup5, tub1の診断であった。切除可能病変と考え子宮合併切除を伴う腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を予定した。全身麻酔下で手術に先立って両側尿管ステントを挿入したが、腫瘍によって尿管口が圧排されていた。切除不能の可能性を考慮して横行結腸人工肛門はそのままとして手術を開始した。腹膜播種はなく子宮以外の周囲臓器への浸潤を認めないため切除可能と判断した。子宮の靭帯及び血管をクリッピングしながら切離していき、バジパイプをガイドに膣前壁側を切離した。後壁側はブラインドとなるため最後に切離することとした。直腸はIMA根部処理を行い、TMEの層で腹腔側から可及的に肛門側へ剥離した。横行結腸人工肛門を閉鎖したのちS状結腸を切離して腹膜外ルートで断端を引き出した。人工肛門を造設して腹部操作を終了した。次に体位を右側臥位とし、肛門を縫合閉鎖したのち会陰操作を開始した。尾骨を付ける形で肛門部の剥離をすすめ、直腸後腔に入り肛門挙筋を切離していった。口側腸管を創外に引き出して膣後壁のみでつながった状態とし、腫瘍より離して直視下で切離して病変を切除した。膣断端も直視下で縫合閉鎖した。術後一過性に排尿障害を認めたが、保存的に軽快し術後32日目に退院した。最終組織診断はType2, 10X8cm, tub2>tub1, pT4b (SIAI、Uterus) N1b M0で膣の切除断端は陰性であった。現在術後補助化学療法を行っている。子宮浸潤直腸癌症例において本術式は十分な切除距離を確保するうえで有用と考えた。