講演情報

[P2-3]Edwardsiella tarda腸炎の下部消化管内視鏡検査の検討

黒河 聖1, 秦 史壯2 (1.札幌道都病院内科, 2.札幌道都病院外科)
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Edwardsiella tarda(E.tarda)は嫌気性グラム陰性桿菌で自然界に広く分布し,爬虫類,両生類,魚類の常在菌であるが,ヒトへの感染は稀である.しかし免疫不全患者では重症化することも知られていて,敗血症では致死率が高いと報告されている.
症例報告:50歳代女性.腹痛,下血を認め近医を受診.虚血性腸炎を疑い加療目的に当院紹介入院となる.入院時身体所見では左下腹部に圧痛を認め,腹部CT検査では下行結腸の腸管壁肥厚所見と体外式腹部エコー検査でも同様の所見を認めた.血液生化学的検査でCRP0.84mg/dLと軽度上昇を認めた以外は正常値であった.点滴と整腸剤による保存的治療を開始し,症状軽減時に下部消化管内視鏡検査を施行し.下行結腸に限局した粘膜の発赤,浮腫,アフタ所見を認めたが,縦走する潰瘍所見は認めなかった.入院時の便培養検査では,E.tardaが2+と検出されたため,非常に稀なE.tarda腸炎と診断した.
考察:E.tarda腸炎の下部消化管内視鏡検査の報告例は少なく,今回の症例のように大腸粘膜の発赤,浮腫を認めた例や,粘膜下腫瘍様の炎症形態を呈していたという報告もある.また,炎症部位も我々の症例では下行結腸のみであったが,上行結腸のみ,上行結腸からS状結腸までと様々であった.
今後E.tarda腸炎症例の蓄積にて内視鏡所見の特徴を解明し,診断治療に役立てることを期待したい.