講演情報

[P2-4]Persistent Descending Mesocolonの術前診断について

吉田 貢一, 高長 絋平, 山崎 裕人, 丸銭 祥吾, 牧田 直樹, 浅海 吉傑, 野崎 善成, 田畑 敏, 家接 健一 (市立砺波総合病院外科)
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【はじめに】Persistent Descending Mesocolon(PDM)は胎生期における左側結腸の固定異常である。左側結腸が右側へ偏位して広汎な癒着を呈し、下行結腸間膜の短縮も伴うため下腸間膜動脈(IMA)と辺縁動脈(MA)が異常に近接し、時にMAを欠くこともある。このためPDMの左側大腸癌の郭清には細心の注意が必要であり、術前のPDM診断は安全な大腸癌手術において重要である。【目的】当院で経験したPDMの検討により、より簡便で確実なPDM術前診断について考察する。【対象と方法】2019年2月から2025年2月までの期間に当科で経験したPDM症例を対象とした。CT画像における診断の契機となる所見として、これまで報告されている、①下行結腸の顕著な内側偏移、②IMA~MA間の近接、③IMAの右側偏移の3つ、そして自験例で特徴的所見と考えた、④大動脈腹側中央からのIMA分枝の所見を加え、4つの所見について検討した。【結果】対象期間に経験したPDMは6例で男/女比は5/1、S状結腸癌3例、下部直腸癌2例、検診CTコロノグラフィ1例であった。所見①と④は全例、所見②は5例で確認されたが、所見③は3例の確認にとどまった。【考察】所見④は造影CTでなくても容易に確認でき、PDMの気付きの所見として有用と考えた。一方、所見③の確認は低率であった。まず所見④でPDMを疑い、所見①から所見②へと確認することが、PDMの簡便で確実な診断になると思われた。【結語】PDMは強い生理的癒着を伴うnormal variantと誤認されて手術される症例も少なくないと推測され、実際の発生頻度は諸家の報告を上回る印象がある。PDMに合併するMAの破格を認識せずに郭清を実施すると再建graftの広汎な壊死を招く危険があるため、PDMを認識した術前診断が肝要である。