講演情報

[P20-1]直腸間膜内に卵巣癌由来リンパ節転移をきたした卵巣癌と直腸S状部癌の重複癌の1例

岩崎 崇文, 佐々木 教之, 琴畑 洋介, 瀬川 武紀, 八重樫 瑞典 (岩手医科大学医学部外科学講座)
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【はじめに】婦人科領域では卵巣癌の直腸浸潤もしくは腹膜播種による浸潤のため、腸管の合併切除が必要となることがある。今回、卵巣癌の腹膜播種による直腸浸潤と直腸S状部癌の重複癌に対して手術を行い、術後の病理検査で卵巣癌の直腸間膜リンパ節転移が明らかになった症例を経験したので報告する。
【症例】65歳、女性。X-1年3月に下腹部痛を主訴に前医を受診し経膣超音波検査で卵巣腫瘍を認めたため、精査目的に当院産婦人科へ紹介となった。MRI検査でダグラス窩に16mm大の造影効果のある充実成分を伴う腫瘤を認めた。一時通院を自己中断したのちに同年11月に再来し、CTガイド下生検より卵巣癌の診断となりX年1月より術前化学療法(パクリタキセル/カルボプラチン療法)が開始となった。治療経過中に行われた下部消化管内視鏡査で直腸S状部に半周性の2型腫瘍と直腸S状部から直腸Raにかけて卵巣癌による圧排所見を認めた。以上より卵巣癌(ⅣB期)と直腸S状部癌(cT3N1aM0 cStageⅢa)の重複癌の診断となり、産婦人科で術前化学療法を4コース行い、同時切除目的に当科へ紹介となった。同年6月に開腹下で卵巣癌に対して子宮単純全摘術と両側卵管卵巣摘出術と回盲部切除、直腸S状部癌に対してHartmann手術を行なった。術後経過は良好で術後16病日に自宅退院となった。病理結果では直腸間膜内のリンパ節転移を認めるも卵巣癌の転移であり、卵巣癌・直腸間膜リンパ節転移(ⅣB期)と直腸S状部癌(pT3N0M0 pStageⅡa)の診断となった。以降は当院婦人科で化学療法を継続している。
【まとめ】卵巣癌による直腸への直接浸潤や播種浸潤による腸間膜リンパ節転移は、卵巣癌の予後不良因子や肝転移のリスクとして報告されている。腸間膜リンパ節転移の機序としては、腫瘍の浸潤により腸管壁へのリンパ管侵襲を起こし腸間膜のリンパ行性に広がると考察されている。直腸癌と卵巣癌の重複癌の診断がついている場合でも、術前に腸間膜リンパ節の腫大が卵巣癌によるものと推測することは難しい。卵巣癌による腸間膜リンパ節転移の可能性もあり、術後のStagingや治療方針にも大きな影響を与えるため、その診断は重要である。