講演情報
[P21-2]複数病変を認めた直腸悪性黒色腫の1例
萩原 清貴1, 鈴木 陽三1, 大里 祐樹1, 池永 雅一2, 清水 潤三1, 冨田 尚裕1 (1.市立豊中病院消化器外科, 2.川西市立総合医療センター外科)
【緒言】直腸肛門部悪性黒色腫は直腸肛門部悪性腫瘍の中では0.38%と比較的稀な疾患である。【症例】80歳, 女性。健診で便潜血陽性を指摘され、近医の下部内視鏡検査で直腸Rbに12mmのIsp病変を認めた。他院消化器内科でEMRを指摘され、悪性黒色腫、ly1と診断され、当院消化器内科に紹介された。当院での下部内視鏡検査でEMR瘢痕周囲以外にも黒色病変を認め、手術目的に当科に紹介された。胸腹部CT、FDG-PETで明らかな遠隔転移を認めなかった。直腸Rb悪性黒色腫に対し腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術、D3郭清を施行した。術後に肺動脈塞栓症を認め、抗凝固療法を開始した。術後23日目に退院された。術後補助化学療法は行わず、術後6カ月経過した現在、無再発生存中である。【考察】直腸肛門部悪性黒色腫は早期から高率に血行性、リンパ行制に転移を認めるため予後不良な悪性腫瘍である。5年生存率は4.6~25%と報告されている。確定診断は生検により腫瘍のメラニン顆粒を証明することであるが、色素に乏しい無(低)色素性悪性黒色腫も存在し、DOPA反応やMelan-Aなどの免疫染色の結果を踏まえて診断される。治療は外科切除が基本で、本邦では腹会陰式直腸切断術が多く行われている。化学療法に関しては症例数が少なく標準的なレジメンが確立していないのが現状である。【結語】複数病変を認めた直腸悪性黒色腫に対し腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した高齢女性の1例を経験したので報告する。