講演情報

[P21-3]腹会陰式直腸切断術を施行した直腸肛門部悪性黒色腫の1例

守 正浩1, 鈴木 英之1, 塩田 美桜1, 塩田 吉宣2 (1.塩田記念病院外科, 2.塩田病院外科)
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【緒言】直腸肛門部悪性黒色腫は消化管原発悪性黒色腫の中でも稀な疾患で、進行が早く局所再発や遠隔転移の頻度が高い。今回、我々は局所切除後に腹会陰式直腸切断術を施行した1例を経験したので文献的な考察を踏まえて報告する。【症例】75歳、男性。持続する下血および肛門部脱出感を主訴に当院を受診した。肛門診にて、肛門管より脱出する鶏卵大、弾性軟で易出血性の黒色腫瘍を認めた。持続出血のため日常的におむつを要していた。悪性黒色腫を疑い、まずは出血コントロール目的で局所切除を行った。病理組織学的には、陰窩上皮と扁平上皮からなる粘膜にメラニン色素を含む腫瘍細胞の増殖を認め、免疫染色にてHMB-45、SOX-10陽性であり、悪性黒色腫と確定診断された。造影CT検査にて遠隔転移は認めなかったが、上直腸動脈領域リンパ節の腫大を認め、転移の可能性が示唆された。局所切除より2週間後、根治的手術として腹会陰式直腸切断術および3群リンパ節郭清を施行した。摘出されたリンパ節は肉眼的に黒色であり、病理組織学的にも転移陽性であった。現在、免疫チェックポイント阻害薬を用いた術後補助化学療法を行いながら経過観察中である。【考察】本症例では局所切除により一時的な止血が得られ、確定診断に至ったうえで根治的切除に移行し得た。一方で、初診時に全身の転移検索を行っていれば一期的な切除の可能性があったことが反省点である。直腸肛門部悪性黒色腫は稀なため、リンパ節郭清を伴う根治的切除および補助化学療法についての報告は少ない。今後も症例の蓄積と検討が必要と思われる。