講演情報

[P22-1]進行直腸癌に対する術前補助療法の治療効果

藤井 正一, 山本 寛大, 伊藤 慎吾, 赤羽 祥太, 数納 祐馬, 田中 茉里子, 藤原 典子, 下山 ライ, 川原 敏靖, 細田 桂 (湘南鎌倉総合病院外科)
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【背景】近年本邦でも術前治療の報告が見られるようになり、放射線化学療法の局所制御は良好であるともされる。しかし生存率向上の明確なエビデンスは少なく、術前化学療法単独はガイドラインでは行わないことを弱く推奨とされている。
【目的】進行直腸癌に対する術前補助療法の治療効果を検討する。
【方法】cT3以深cN1b以上進行直腸癌RaもしくはRbに対し2000年から術前化学放射線療法(CRT、50.4Gy+TS1)、他臓器転移もしくはcStageⅢcの症例に術前化学療法(NAC、CapeOx+Bev)を導入した。2024年からCRTの治療強度を上げる目的にTotal Neoadjuvant Therapy (TNT、25Gy+CapeOx) を導入した。2000~25年の術前治療群(NeoAd)と同時期のcStageⅡ以上手術先行群(Surg)の治療成績を比較した。また組織学的効果別の長期成績を比較した。
【結果】NeoAdは28例でCRT16、NAC8、TNT4であった。Surgは64例で背景(NeoAd:Surg)は年齢(67:75歳)、肛門縁腫瘍距離(4:8cm)、cStage(28.6:7.8%)に差があった。手術アプローチ法に差はなく術式(直腸切断術57.1:26.6%)、Diverting stoma造設率(64.3:10.8%)に差を認めた。短期成績(NeoAd:Surg)はロボット支援下手術のコンソール時間(245:190分)、出血量(130:30ml)に差を認めた。短期合併症に差はなく縫合不全(0:15.8%)がSurgに、創部感染(17.9:9.4%)がNeoAdに多い傾向だが有意ではなかった。術後在院(13:15日)に差なし。長期成績(NeoAd:Surg)は5年全生存率(69.7:73.3%)、無再発生存率(59.7:58.3%)、疾患特異的生存率(69.7:84.6%)、累積再発率(43.1:30.%)、累積局所再発率(14.3:10.6%)に差を認めなかった。組織学的治療効果はGrade3:14.3%、2:64.3%、1b:14.3%、1/0:7.2%で、Grade2以上はCRT93.8%、TNT100%、NAC37.5%で差を認めた。Grade2/3:0/1の無再発生存率(73.4:0%)、累積再発率(30.7:100%)、累積局所再発率(0:100%)に差を認めた。
【結語】進行直腸癌に対するNeoAdの周術期成績はやや不良であったが、組織学的治療効果が良好な場合に予後改善の見込みあり、放射線化学療法に期待できる可能性がある。