講演情報

[P22-3]閉塞症状を有する下部直腸癌に対するTotal neoadjuvant therapyの短期治療成績

山下 真司1, 川村 幹雄1, 家城 英治1, 嶌村 麻生1, 天白 成1, 市川 崇1, 浦谷 亮1, 今岡 裕基1, 志村 匡信1, 北嶋 貴仁1,2, 安田 裕美1, 大北 喜基1, 吉山 繁幸1, 奥川 喜永1,2, 小林 美奈子1, 大井 正貴1, 問山 裕二1 (1.三重大学大学院消化管・小児外科学講座, 2.三重大学病院ゲノム診療科)
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【背景】近年進行下部直腸癌治療においてはTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が導入され、clinical Complete Response (cCR)を得た症例には臓器温存を試みるwatch and wait(W&W)が脚光を浴びている。当科では2018年からTNTを導入し、cCR症例に対するW&Wも増加傾向にある。最近では高度の肛門痛や閉塞症状を有する直腸癌に対しても人工肛門造設を先行したうえでTNTによる術前治療を行っている。しかし、人工肛門造設後にTNTを施行した症例の治療成績は未だ明らかではない。【目的】閉塞等の症状のために人工肛門造設を先行した後に、TNTを施行した症例の治療成績について検討する。【方法】2018年7月から2024年4月までに当院でTNTを施行した進行下部直腸癌のうち、人工肛門造設術を先行した14例について、その治療成績や根治術時の周術期合併症について調査した。【結果】年齢中央値(範囲)は60(38-71)歳、男女比は12:2、観察期間中央値(範囲)は31(17-82)ヶ月で、病期はcStage II/ III = 1/13であった。3例(21.4%)がcCRと判断されてW&Wが行われ、このうち2例が無再発を維持し人工肛門が閉鎖された。TNT実施中に、腫瘍による局所症状を理由に治療を中断した症例は認めなかった。根治術は12例(85.7%)に施行され、このうち6例が肛門温存可能であった。pathological CRは2例(16.7%)で確認された。TNT前に人工肛門を造設していない症例と比較し、CR(cCR+pCR)率や全生存期間、無再発生存期間に有意差をみとめなかった。また、Clavien-Dindo分類 Grade3以上の合併症やSSIの発生についても有意差を認めなかった。【結語】閉塞などの症状を伴う進行下部直腸癌に対しては人工肛門をTNT導入前に造設することで、治療を中断することなく実施することが可能となり、良好な治療成績に寄与する可能性がある。