講演情報

[P22-6]大腸癌骨盤内再発病変に対する術前短期放射線照射および続く外科的切除の治療関連成績

今泉 健, 市川 伸樹, 吉田 雅, 大野 陽介, 柴田 賢吾, 佐野 峻司, 武冨 紹信 (北海道大学病院消化器外科I)
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背景:大腸癌術後の骨盤内再発病変に対する局所治療戦略には議論がある。当科では、切除可能病変に対しては外科切除を基本とするが、切除断端の確保が不確実な可能性がある場合は、術前治療として短期放射線照射を選択している。
目的:大腸癌骨盤内再発病変に対する術前短期放射線照射とその後の外科的切除の短期治療成績を明らかにする。
方法:2024年4月から2025年1月の期間で、北海道大学病院にて、大腸癌術後の骨盤内再発病変に対して、短期放射線照射(5Gy x 5日間)後の外科的切除を計画した5例の治療関連成績について検討を行った。
結果:患者背景は年齢の中央値が68歳、性別(男/女)が2/3例、病変位置(前/後/側)は2/1/2例であった。短期放射線照射は5例すべてで計画通り完遂できたが、1例で照射後に、照射外病変の出現により切除不能と判断された。外科的切除が施行された4例の術式は、I.腹腔鏡下マイルズ手術+仙骨合併切除(TpTME併用)、II.ロボット支援下マイルズ手術+子宮膣合併切除、III.開腹ハルトマン手術+左外腸骨動静脈・大腰筋合併切除、IV.ロボット支援下骨盤内蔵全摘(TpTME併用)、臀溝皮弁による骨盤底形成であった。手術時間・出血量はそれぞれ、I.806分・140ml、II.442分・250ml、III.736分・730ml、IV.769分・760mlであった。術後合併症は、仙骨合併切除を施行した症例で、Clavien dindo分類Grade 4の大腸炎による敗血症を認めたが、その他にGrade 3以上の合併症の発症はなく、術後在院日数はそれぞれ、I.39日、II.20日、III.39日、IV.37日であった。病理所見では、いずれも切除断端は陰性であった。CEA(ng/ml)の治療前・治療後・手術後の推移はそれぞれ、I.78.5→32.5→2.2、II.5.4→5.4→1.8、III.15→7.6→4.3、IV.5.1→1.9→1.8で、いずれも手術後は正常範囲となった。
結論:大腸癌骨盤内再発病変に対する術前短期放射線照射後の外科的切除は、術後の感染性合併症の発生には注意を要するが、安全な手術が可能であり、切除断端の確保に寄与する可能性がある。骨盤内再発病変に対する局所治療戦略の一つになりうる。