講演情報

[P24-2]進行横行結腸癌に併存する多発リンパ節腫大の鑑別に苦慮した1例

坂本 恭子, 鳥崎 友紀子, 平田 雄紀, 下田 啓文, 島田 岳洋, 関本 康人, 浦上 秀次郎, 石 志紘 (国立病院機構東京医療センター一般・消化器外科)
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諸言:大腸癌の初診時に多発リンパ節腫大が存在した場合、大腸癌遠隔転移を疑い化学療法を行うことが一般的である。一方で、全身のリンパ節が腫大する疾患は複数存在する。今回我々は、初診時に横行結腸癌多発リンパ節転移として治療開始したが最終的に横行結腸癌と悪性リンパ腫の併発と診断された症例を経験したため診断経過の考察を含めて報告する。
症例:75歳女性。便潜血陽性を契機に大腸内視鏡を施行したところ脾湾曲部横行結腸に2型腫瘍あり、内腔高度狭窄ありスコープ通過不能。生検病理で高分化腺癌、RAS mutant(G12V)、BRAF wild、MSI high。造影CTで横行結腸壁肥厚、傍大動脈・腋窩・傍胸骨・内腸骨領域リンパ節腫大あり。PETでCTでの指摘部位の他、右臀筋内、左胸膜への集積あり。結腸癌 cT4b(小腸)N3M1b(LYM,左胸膜,右臀筋) cStageⅣbの診断でストマ造設後Pembrolizumabにて化学療法の方針となった。横行結腸ストマ造設術後1ヶ月、Pembrolizumab(3週毎)開始。Pembrolizumab 4コース投与後の効果判定CTにて、原発巣および領域リンパ節は部分奏功であったがその他の遠隔病変は増大し脾結節も出現した。このため化学療法開始後4ヶ月に増大傾向の右閉鎖領域リンパ節の針生検を行った。病理では類上皮性肉芽腫の形成がありサルコイドーシスまたはサルコイド様反応が疑われた。診断的治療目的にステロイド投与を予定したが、化学療法開始9ヶ月後小腸穿孔が起こり緊急で小腸部分切除を行った。病理所見で悪性リンパ腫の診断となり現在Pembrolizumab休薬しR-CHOP療法を施行している。
考察:大腸癌に伴う多発リンパ節腫大を確認した場合、腫大部位が非特異的である場合は他疾患の合併を念頭に置く必要がある。しかし悪性リンパ腫に特異的な画像所見はないため、生検と診断的治療のどちらを先行するかは侵襲度を考慮して決定する必要がある。
結語:横行結腸癌に併存する全身多発リンパ節転移を悪性リンパ腫と診断するのに苦慮した症例を経験した。