講演情報
[P24-4]高齢男性に発症した肛門外脱出S状結腸癌の1例
石井 健一, 樫山 基矢, 河島 秀昭 (勤医協中央病院)
症例は67歳男性.排便時に腸管が脱出し,強い左下腹部痛を自覚したため当院へ救急搬送された.肛門から長さ約15cmの腸管が脱出していたが,この時点では明らかな腫瘍性病変は指摘できなかった.血液検査所見で白血球数は正常範囲内,CRP値は陰性だった.腹部CT検査では直腸からS状結腸に同心状構造を認めた.疼痛が強く無麻酔では還納困難だったため,腰椎麻酔下に腸管を還納し,腹痛症状は改善して同日入院した.入院2日目に大腸内視鏡検査を施行し,S状結腸に粘膜障害を認め,脱出腸管の嵌頓による血流障害と整復手技による損傷と考えた.入院3日目に食事を開始し,その後も腹痛症状の再燃がないことを確認し,入院11日目に退院した.発症1ヶ月後に大腸内視鏡検査を施行し,直腸Ra に 0-Is 病変とS状結腸の狭窄を認め,その口側の観察はできなかった.発症2ヶ月後に施行した大腸内視鏡検査では狭窄部は通過可能になっており,その口側のS状結腸に径30mmの1型腫瘍を認め,生検で高分化型管状腺癌の診断となった.直腸Ra の 0-Is 病変に対して内視鏡的粘膜切除術を施行し,初回還納以降に緩下剤の調整を行い,腫瘍の肛門外脱出を再発することなく,発症から4ヶ月後に腹腔鏡下S状結腸切除D3郭清を施行し,経過は良好で術後6日目に退院した.病理所見から中分化管状腺癌,T2N0M0, pStage I と診断した.粘膜障害があったと考えられる部位には再生性の粘膜上皮であり,粘膜固有層に出血や単核球浸潤を伴い,粘膜下層に線維化を認めた.現在再発なく経過している.肛門外に脱出したS状結腸癌は比較的稀であり,さらに男性の報告例は少ない.今回高齢男性に発症した肛門外に脱出したS状結腸癌を還納後に診断し,根治切除可能だった1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.