講演情報
[P25-1]骨盤内腫瘍に対する外科的切除について
原田 優香, 門野 政義, 岡林 剛史, 岡田 純一, 中山 史崇, 森田 覚, 茂田 浩平, 北川 雄光 (慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器外科))
【目的】骨盤内腫瘍は頻度は高くないものの骨盤外科手術を取り扱う大腸外科医を困らせる難治性疾患である.中でも神経鞘腫や脊索腫など多くの骨盤内腫瘍は化学療法や放射線治療が奏効せず,外科的切除が治療法の第一選択である.その疾患頻度と病理組織学的な多様性により,骨盤内腫瘍の外科的切除に関するまとまった報告はないのが現状である.今回われわれは当院で手術加療を行った骨盤内腫瘍の症例についてまとめたので,その臨床病理学的な特徴および手術方法・成績について報告する.
【方法】2013年4月から2025年4月に当科で大腸癌,婦人科癌および肉腫を除く骨盤内組織を原発とした腫瘍に対して外科的切除を行った症例を対象とし,腫瘍の組織型,最大径,術式,手術時間,出血量,合併症などについて後方視的に検討した.
【結果】対象は21例,男性9例,女性12例,年齢中央値50歳(42-62歳)であった.組織型は神経鞘腫11例(うち悪性1例),脊索腫5例,孤立性線維性腫瘍2例,リンパ管腫1例,平滑筋腫1例,濾胞性リンパ腫1例であった.手術アプローチ法は開腹6例,腹腔鏡15例(用手補助移行1例含む)であり,腸管切除を伴う症例は3例あった.開腹6例のうち4例は開腹歴のある症例であり,残る2例は腫瘍径が12cm, 24cmの巨大腫瘍であった.術前に12例で血管塞栓術を施行し,11例で尿管ステントを挿入していた.腫瘍の大きさは手術時間の延長に有意に関係しており(β = 26.2 [2.64, 49.7], p = 0.031),出血量の増加にも有意に関係していた(β = 203 [68.2, 338], p = 0.005).術後死亡症例はなく,尿管損傷含め予定外の臓器損傷もなかった.合併症としては膀胱直腸障害が最も多く,5例で自己導尿を,1例で人工肛門造設を要した.他に神経障害性疼痛2例,術後麻痺性イレウス1例,腹壁瘢痕ヘルニア1例といった合併症を認めた.
【結語】骨盤内腫瘍の外科的切除では,腫瘍が大きいほど手術時間や出血量が有意に多く,手術の難度が上がっていた.骨盤内腫瘍の手術の際にはそれを想定し,術前に血管内塞栓術や尿管ステント挿入などの準備を行い,手術のアプローチ法も検討することで,根治性と安全性を両立した手術ができると考えられた.
【方法】2013年4月から2025年4月に当科で大腸癌,婦人科癌および肉腫を除く骨盤内組織を原発とした腫瘍に対して外科的切除を行った症例を対象とし,腫瘍の組織型,最大径,術式,手術時間,出血量,合併症などについて後方視的に検討した.
【結果】対象は21例,男性9例,女性12例,年齢中央値50歳(42-62歳)であった.組織型は神経鞘腫11例(うち悪性1例),脊索腫5例,孤立性線維性腫瘍2例,リンパ管腫1例,平滑筋腫1例,濾胞性リンパ腫1例であった.手術アプローチ法は開腹6例,腹腔鏡15例(用手補助移行1例含む)であり,腸管切除を伴う症例は3例あった.開腹6例のうち4例は開腹歴のある症例であり,残る2例は腫瘍径が12cm, 24cmの巨大腫瘍であった.術前に12例で血管塞栓術を施行し,11例で尿管ステントを挿入していた.腫瘍の大きさは手術時間の延長に有意に関係しており(β = 26.2 [2.64, 49.7], p = 0.031),出血量の増加にも有意に関係していた(β = 203 [68.2, 338], p = 0.005).術後死亡症例はなく,尿管損傷含め予定外の臓器損傷もなかった.合併症としては膀胱直腸障害が最も多く,5例で自己導尿を,1例で人工肛門造設を要した.他に神経障害性疼痛2例,術後麻痺性イレウス1例,腹壁瘢痕ヘルニア1例といった合併症を認めた.
【結語】骨盤内腫瘍の外科的切除では,腫瘍が大きいほど手術時間や出血量が有意に多く,手術の難度が上がっていた.骨盤内腫瘍の手術の際にはそれを想定し,術前に血管内塞栓術や尿管ステント挿入などの準備を行い,手術のアプローチ法も検討することで,根治性と安全性を両立した手術ができると考えられた.