講演情報

[P25-4]骨盤内拡大手術における骨盤内大網充填後の経時的変化の検討

草深 弘志, 植村 守, 樋口 智, 大崎 真央, 楠 誓子, 瀧口 暢生, 朴 正勝, 竹田 充伸, 関戸 悠紀, 波多 豪, 浜部 敦史, 荻野 崇之, 三吉 範克, 江口 英利, 土岐 祐一郎 (大阪大学医学部消化器外科)
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【はじめに】
局所進行再発直腸癌に対しては外科切除が第一選択となる。根治性を担保するため周囲臓器の合併切除を要することが多く、しばしば骨盤内臓全摘術(TPE)や仙骨合併切除などの骨盤内拡大手術が施行される。
骨盤内拡大手術では、切除後の組織欠損が大きく骨盤死腔炎の発生が大きな問題となる。このため、骨盤内充填のため腹直筋皮弁や有茎大網充填などの骨盤充填が選択されることが多い。大網充填は手術侵襲や術後QOLに与える影響も少ないため、施行される頻度が比較的高いと考えられる。
しかしながら、骨盤内に充填された大網の体積が術後どのように変化していくかを検討したまとまった報告は見られないため、本研究では骨盤内に充填された大網体積が術後の経過に伴いどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
2005年から2022年まで当院で63例の骨盤内拡大手術において、骨盤の有茎大網充填が施行され、そのうち術後1週間目と術後2年目のCT画像検査と臨床データが入手可能な29例を対象とした。
大網の面積はSYNAPSE 医用画像情報システムを用いてS2、S4および尾骨レベルにおいて大網と推定される脂肪組織を含む部分の面積を測定した。尾骨や仙骨合併切除を施行した場合は大腿骨頭レベルをその代替とした。
大網体積の指標として、各レベルにおける大網面積の合計をGreater Omentum Volume Index(GOVI)と定義し、術後1週間の画像を基準に、術後2年目のCT画像での骨盤内の大網面積およびGOVIを比較した。
【結果】
解析対象となった29例のうち、初発局所進行直腸癌が2例(TPE2例)、直腸癌局所再発27例(TPE14例、後方TPE2例、仙骨合併切除13例。重複含む)であった。腹腔内アプローチは開腹16例、腹腔鏡13例(内、開腹移行1例)であった。
また、GOVIは中央値:42.3 vs 23.8, p=0.0013と術後2年目は有意に減少していた。しかし全体の6.9%(n=2)の症例においてはGOVIの増加が見られた。GOVIと骨盤死腔炎には明らかな相関は見られなかった。
【結論】
充填された大網体積は、術後有意に縮小する傾向が見られた一方で拡大傾向を示す症例も確認できた。