講演情報

[P26-2]S状結腸腸間膜に連続する腹腔内腫瘍に対して腹腔鏡下切除を施行し,孤立性線維性腫瘍(Solitary Fibrous Tumor : SFT)と診断された1例

佐藤 二郎1, 榎本 俊行1, 長尾 さやか1, 柿崎 奈々子1, 秋元 佑介1, 石井 賢二郎1, 斉田 芳久1, 横内 幸2 (1.東邦大学医療センター大橋病院外科, 2.東邦大学医療センター大橋病院病理診断科)
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症例は47歳,女性.検診で子宮内膜ポリープ指摘され,腹部CTにて骨盤内の嚢胞性腫瘤を認め,精査加療目的に当科紹介受診した.腹部造影CTでは下腹部正中に40mm大の腫瘤を認め,造影効果を伴い,S状結腸に連続していた.壁外発育型GISTの疑いで診断・加療目的に手術の方針とし,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.腫瘍はS状結腸腸間膜に存在し,周囲との癒着は認めなかった.手術時間111分、出血量少量で術中合併症はなく終了した。病理組織学的所見は充実成分と嚢胞成分が混在する境界明瞭な結節性病変で,類上皮様あるいは紡錘形細胞が密に増殖,膠原繊維の増生を認め、免疫染色ではc-kit陰性,CD34陰性,s-100陰性,Desmin陰性,α-SMA陰性,STAT6陽性であった.形状,免疫染色からsolitary fibrous tumor(孤立性線維性腫瘍:以下SFT)と診断された.術後経過は良好で術後7日目に退院となり,現在まで術後4ヶ月,再発所見は認めず経過観察中である.
SFTは主に胸膜に発生する稀な間葉系腫瘍であるが,近年では胸膜外,すなわち頭頸部,縦隔,肺,上腹部,後腹膜,骨盤腔など全身のさまざまな部位に発生しうることが明らかとなっている.腹腔内SFTの報告は依然として少なく,特に消化管腸間膜を原発とする例は稀である.確定診断には病理組織学的および免疫染色学的所見が重要であり,特にSTAT6核内陽性はSFTに特異的な所見とされている.SFTの治療の第一選択は外科的切除であり,完全切除が予後に大きく関与する.SFTは一般に良性とされるが,12~37%が悪性,または良性でも再発した症例が報告されており,長期的な経過観察が必要である.
本症例のようにS状結腸腸間膜に発生したSFTは非常に稀であり、術前の画像診断のみでは腫瘍の同定が困難であるため,手術による摘出と病理診断が極めて重要である.今回われわれは,腸間膜原発SFTの1例を経験したので文献学的考察を加えて報告する