講演情報

[P27-1]横行結腸癌術後の腹膜播種再発を含めた遠隔転移の複数回の切除と化学療法により、長期生存を得られている1例

西田 莉子, 永井 香織, 大宜見 崇, 宮北 寛, 茅野 新, 山本 聖一郎 (東海大学医学府附属病院消化器外科)
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【初めに】大腸癌術後の腹膜播種再発は予後不良であり,外科的切除の適応外とされることが多く,化学療法や緩和医療を中心とした治療が選択されることが多い.しかし近年は,大腸癌化学療法の進歩を背景に,集学的治療により長期生存を得られている症例も報告されている.今回,横行結腸癌術後の局所・播種再発に対して複数回の切除と化学療法を行い,長期生存を得られている1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.【症例】60歳,女性.2009年,横行結腸癌に対して,横行結腸切除・胆嚢摘出術・子宮全摘術・両側附属器切除・膀胱部分切除施行した.組織学的には粘液癌 SI(膀胱)N0 Stage IIであった.術後化学療法としてUFT/UZEL療法を行なった.2016年吻合部に局所再発を認めFOLFILI+Bevacizumab(Bmab)療法を12Kr行い,その他の遠隔転移を認めず,吻合部再発(結腸小腸瘻孔)に対して,横行結腸切除・小腸部分切除を2016年に施行した.再発高リスクと考え,補助化学療法として,CAPOX+Bmab療法を76Kr行った.2021年にPET-CTで腹壁直下に局所再発を認め,小腸部分切除・横行結腸切除・播種結節切除(胃・小腸間膜・小腸・腹壁・ダグラス窩)を施行した.その後化学療法を行わず経過観察していたが,2023年に腫瘍マーカーの上昇を認め,IRIS+Bmab療法を16Kr行った.2025年PET-CTで小腸播種再発を認め,小腸部分切除を施行した.【考察】大腸癌の異時性腹膜播種に対する治療に関して,2024年大腸癌治療ガイドラインでは,原発巣治癒切除後の腹膜再発は全身性疾患の一環として出現しているとみなすのが妥当であり,全身薬物療法を実施することが推奨されている.また,限局した腹膜再発で病勢が制御できている場合に限り切除を行う場合があるが,有効性は明らかではないため,耐術能など考慮し,慎重に適応を決定すべきであるとされている.本症例は,初回の横行結腸癌の手術より16年の経過で,経過中に3回の吻合部・局所再発,腹膜播種再発を認め,いずれも肉眼的な完全切除を行ない,化学療法も含めた集学的治療により長期生存を得られている.耐術能と病勢次第ではあるが,腹膜播種再発を繰り返す患者でも手術と化学療法により長期予後が得られる場合もあると考えられる.