講演情報
[P27-2]卵巣癌骨盤内遺残再発に対しS状結腸ストーマ造設後、化学放射線療法により根治が得られ5年後にストーマ閉鎖が可能となった一例
三浦 智也1, 辻仲 眞康1, 初沢 悠人1, 北村 洋1, 山家 研一郎2, 澤田 健太郎1, 桜井 博仁2, 日景 允1, 三田村 篤1, 高見 一弘2, 近藤 典子2, 山本 久仁治2, 中野 徹1, 片寄 友2, 柴田 近1 (1.東北医科薬科大学外科学第一消化器外科, 2.東北医科薬科大学外科学第一肝胆膵外科)
【症例】48歳女性。卵巣癌T2N0M0と診断し開腹で子宮付属器・大網切除を行ったが、骨盤壁浸潤部で癌遺残となった。術後、化学療法を行ったが病変が徐々に拡大し、初回手術から3ヶ月後に切除を試みた。しかし、腫瘍は総腸骨動静脈やS状結腸に浸潤しており切除困難と判断、双孔式S状結腸ストーマを造設し、化学放射線療法(CRT)を行った。半年後のCT検査で腫瘍は消失し、その後5年間、腫瘍再増大や遠隔転移を認めずストーマ閉鎖の方針となった。術前内視鏡検査で、ストーマの肛門側は狭小化し可動性不良であった。腹腔鏡下で 観察、腹膜播種を認めず、骨盤壁や総腸骨動静脈からS状結腸を剥離することができた。ストーマを腹壁から剥離し、腹腔鏡下で S状結腸浸潤部より肛門側を離断しDST吻合を行った。予防的ストーマは造設しなかった。手術時間は278分で出血は50mlであった。縫合不全等の合併症はなく、食事開始後に頻回の排便を認めたが便失禁はなく術後2週間後に症状は消失した。
【考察】一般に骨盤内手術術後に放射線治療を追加した場合、強い癒着、解剖学的構造の変異や組織可動性の消失により再手術は極めて困難とされる。本症例では、CRTにより遺残腫瘍が消失し、長期間を経て癒着や瘢痕化が軽減した可能性が示唆された。しかし、5年という長期間の便通遮断により排便障害の懸念がある。本症例は術後早期から排便機能回復を認めた。ストーマ形成状態でも、骨盤神経や陰部神経が温存されていれば反射的収縮や求心性刺激の保持により便通再開後に排便機能低下が生じにくい可能性がある。
【結語】本症例では卵巣癌術後の遺残再発に対してS状結腸ストーマが造設され、根治的CRTを行い、5年間の無再発期間を経て病変部切除及びストーマ閉鎖術が可能となったうえに排便機能も速やかに回復した。骨盤手術及び放射線治療後の再手術や長期間ストーマ保有時の排便機能について文献的考察を含め報告する。
【考察】一般に骨盤内手術術後に放射線治療を追加した場合、強い癒着、解剖学的構造の変異や組織可動性の消失により再手術は極めて困難とされる。本症例では、CRTにより遺残腫瘍が消失し、長期間を経て癒着や瘢痕化が軽減した可能性が示唆された。しかし、5年という長期間の便通遮断により排便障害の懸念がある。本症例は術後早期から排便機能回復を認めた。ストーマ形成状態でも、骨盤神経や陰部神経が温存されていれば反射的収縮や求心性刺激の保持により便通再開後に排便機能低下が生じにくい可能性がある。
【結語】本症例では卵巣癌術後の遺残再発に対してS状結腸ストーマが造設され、根治的CRTを行い、5年間の無再発期間を経て病変部切除及びストーマ閉鎖術が可能となったうえに排便機能も速やかに回復した。骨盤手術及び放射線治療後の再手術や長期間ストーマ保有時の排便機能について文献的考察を含め報告する。