講演情報

[P28-4]直腸癌術後に出現した下大静脈背側のリンパ節転移に対して化学療法後に切除し得た1 例

田島 佑樹1,2, 山本 聖一郎1,2, 大谷 理紗1, 室井 貴子1, 西村 英理香1, 原 明日香1, 林 啓太1, 金子 靖1, 藤崎 洋人1, 本郷 久美子1, 葉 季久雄1, 米山 公康1, 中川 基人1, 高野 公徳1 (1.平塚市民病院, 2.東海大学医学部付属病院消化器外科)
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症例は57歳女性。血便の精査で診断された下部直腸癌(cT1bN0M0 cStageⅠ)に対し、腹腔鏡下直腸低位前方切除術、回腸人工肛門造設術を施行した。最終病理診断は、直腸癌T3N1aM0 pStageⅢbであった。カペシタビンによる術後補助化学療法を施行し、その後は定期的なフォローアップを行っていたところ、術後2年3か月のCT検査で腹部大動脈から両側総腸骨動脈領域のリンパ節転移を指摘された。全身化学療法(TEGAFIRI+Cmab 15コース, Capox+Bmab 32コース)を施行した。cPRを継続しており、術後5年7カ月より経過観察とした。術後7年のCT検査で右腎静脈背側の軟部濃度結節の増大を認め、CTガイド下生検でAdenocarcinomaの診断となった。約2年間の全身化学療法(IRIS+Pmab 9コース、FDP/TPI+Bmab 3コース、Capox+Bmab 11コース)を施行し、途中PRの判定も最終PDの判定となり、術後9年目のCT検査上、右腎静脈~下大静脈の背側に長径3cm大の腫瘤を呈していた。PET検査で他に遠隔転移を認めず、手術の方針とした。上中腹部正中切開で開腹後、右側結腸、十二指腸を授動し、下大静脈を確認した。右腎も背側より授動し、右腎動静脈、右尿管、下大静脈をテーピングした。下大静脈背側に流入する腰静脈を結紮切離した上で、右腎動静脈の背側から下大静脈の背側に位置する腫瘤を摘出した。病理診断は直腸癌リンパ節転移の診断となった。術後経過は良好で、第5病日退院となった。術後9カ月経過し、再発の徴候を認めていない。直腸癌の下大静脈背側のリンパ節再発は稀であるが、化学療法と外科手術を行い、病状のコントロールが可能であった。下大静脈背側の単発リンパ節転移に対し、合併症なく切除し得た1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。