講演情報

[P3-1]手術前処置としての桃核承気湯およびクエン酸マグネシウムの後方視的検討

天海 博之, 外岡 亨, 早田 浩明, 成島 和夫, 千葉 聡, 加野 将之, 磯崎 哲朗, 平澤 壮一朗, 桑山 直樹, 鍋谷 圭宏 (千葉県がんセンター食道・胃腸外科)
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【背景】腸管前処置は縫合不全や腸管拡張など手術に大きく影響するが、その内容や方法は施設の方針や経験により一定しない。
目的:前処置の内容および方法と、腸管洗浄度や拡張など手術への影響に関して後方視的に検討する。【対象と方法】対象は2024年10月から2025年4月で、手術を行った左側結腸癌および直腸癌症例。当院では、手術前々日に入院し、絶食で桃核承気湯内服を開始、排便状況によりクエン酸マグネシウムを追加するか検討しているため、桃核承気湯群と桃核承気湯+クエン酸マグネシウム群に関して比較・検討を行った。【結果】桃核承気湯群vs桃核承気湯+クエン酸マグネシウム群で比較すると、年齢中央値 65歳vs 63.5歳、性別(男:女)18/14例 vs 6/8例、術式(SR/HAR/LAR/sLAR)11/5/10/6例 vs 5/6/1/2例であった。手術前々日の排便回数中央値は0回(0-4) vs 1回(0-6) (p=0.061)、手術前日の排便回数中央値は5回(2-10) vs 5.5回(1-10) (p=0.498)で桃核承気湯のみの場合、前々日の排便が少なく前日から排便回数が増えていた。術中所見は、小腸拡張(小腸全体の1/3未満:1/3以上2/3未満:2/3以上)20:8:4 vs 7:3:4であった。横行結腸拡張(有/無)3/29例 vs 5/9例 (p=0.044)で、横行結腸拡張は桃核承気湯+クエン酸マグネシウム群で有意に多く、この群の横行結腸拡張5例中4例は手術前日にクエン酸マグネシウムを内服していた。術中内視鏡で吻合部を観察できたのは桃核承気湯群27例、桃核承気湯+クエン酸マグネシウム群4例であった。洗浄度をBoston Bowel Preparation Scale (BBPS;1=粘膜の一部のみ見えるが残便で粘膜の大部分は見えない、2=少量の残便があるが、粘膜が見える、3=残便がなく粘膜全体が見える)で評価すると、BBPS(1/2/3) 5/15/7 例 vs 1/0/3例で桃核承気湯+クエン酸マグネシウム群の方が洗浄度は高かった。縫合不全は桃核承気湯群1例、桃核承気湯+クエン酸マグネシウム群2例であった。【結語】桃核承気湯へのクエン酸マグネシウムの上乗せは、腸管洗浄度は上がるが、横行結腸拡張の可能性がある。特に手術前日のクエン酸マグネシウム投与は横行結腸拡張のリスクがあることを留意すべきである。