講演情報

[P3-4]大腸癌手術におけるSSI予防戦略としての周術期抗菌薬投与の検討

土井 寛文, 上神 慎之介, 中島 一記, 亀田 靖子, 新原 健介, 伊藤 林太郎, 久原 佑太, 宮田 柾秀, 大毛 宏喜, 髙橋 信也 (広島大学大学院医系科学研究科外科学)
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【はじめに】大腸癌術後のSSI予防として術前経口抗菌薬(Oral antibiotics : OA)単独やOA+機械的腸管処置(Mechanical bowel preparation : MBP)が効果的であるとされる.OAを行った場合には術後抗菌薬投与は短期間で良いとする報告がある.
【目的】大腸癌手術症例における,OAの有用性および術後抗菌薬の至適投与期間を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】2019年1月から2024年12月までに当科で待機的に手術を行った大腸癌症例235例を対象とした.2020年9月よりOAを全例に行っており,投与開始前後のSSI発生率を後方視的に比較検討した. 経口抗菌薬は術前日にKanamycin 1500mg/日とMetronidazole 1500mg/日をそれぞれ3回に分けて投与した.術後予防的抗菌薬は原則としてCefmetazole 3g/日を48時間投与していたが,2023年2月以降は24時間投与に変更している.OA施行症例に限定し,抗菌薬投与期間(24時間 vs 48時間)によるSSI発生率を比較検討した.
【結果】235例中,OA群175例,非OA群60例であった. 両群間で年齢, 性別, ASA-PS,腫瘍占拠部位,手術時間,出血量,入院期間に有意差は認められなかった.一方,OA群でMBPが多く(86 % vs 72%, p=0.017),開腹手術症例が少なかった(14% vs 37%, p<0.001).SSI全体の発生率はOA群9.7%,非OA群20%で有意にOA群が低率であった(p=0.043).SSIの内訳を見ると,表層SSI(3.4% vs 1.6%、p=0.68)および深部SSI(1.1% vs 0%, p=1)に有意差は認められなかったが、臓器・体腔SSI(5.1% vs 18%, p<0.05)および縫合不全(1.1% vs 15%、p<0.05)はOA群で有意に低率であった.
さらに術後抗菌薬投与期間について24時間群79例と48時間群79例を比較検討したところ,SSI全体は24時間群11%,48時間群6.3%で有意差を認めなかった(p=0.4).また内訳を見ても表層SSI(5% vs 0%, p=0.12),深部SSI(各1.2%, p=1),臓器・体腔SSI(各5%, p=1),縫合不全(各1.2%, p=1)といずれも有意差を認めなかった.
【結語】術前経口抗菌薬投与は,大腸癌手術においてSSI発生率低下に有効であった.また,術後抗菌薬は24時間変更後も合併症の増加は認めず,短期間投与で十分と考えられた.