講演情報

[P3-6]抗血栓薬投与患者における待機的大腸癌切除術の検討

松村 卓樹, 國友 愛奈, 余語 孝乃助, 戸田 瑶子, 安井 講平, 内野 大倫, 上田 翔, 篠原 健太郎, 大澤 高陽, 安藤 公隆, 深見 保之, 金子 健一朗, 佐野 力 (愛知医科大学消化器外科)
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【緒言】
併存疾患を有し抗血栓薬を服用している患者に対する手術機会は年々増加している。術前抗血栓薬の休薬期間に関する基準は存在するものの、ヘパリンブリッジの必要性、ならびに術後の再開タイミングや投与方法については統一見解がなく、症例ごとの判断に委ねられているのが現状である。本研究では、当院における抗血栓薬服用中の大腸癌切除症例の周術期管理と成績を検討した。
【対象】
2016年1月〜2024年3月に大腸癌で待機的切除を受けた1216例のうち、術前抗血栓薬服用中であった154例(12.7%)を対象とした。
【結果】
男性110例、女性44例、年齢中央値75.5歳(48〜93歳)。抗凝固薬投与が49例、抗血小板薬が97例、両剤併用が8例で、抗血小板薬2剤以上服用は22例であった。基礎疾患は脳血管疾患58例、虚血性心疾患49例、不整脈42例、脂質異常症8例、その他26例(重複あり)。ヘパリンブリッジは43例に施行し、その内訳は抗凝固薬19例、抗血小板薬20例、併用4例であった。術式は開腹6例、腹腔鏡134例、ロボット支援13例、経肛門1例。手術時間中央値235.5分(15〜623分)、出血量中央値12g(0〜574g)であり、術中の止血困難例はなかった。術後抗血栓療法は症例ごとに異なり、手術から再開までの中央値は1日(1〜15日)であった。術後出血性合併症は7例(4.5%)に認め、1例で開腹止血術を要した。Clavien-Dindo分類Grade 3以上の合併症は11例(7.1%)、うち1例が肺炎による呼吸不全で死亡した。血栓塞栓症の発症はなかった。
【結語】
抗血栓薬服用患者に対する大腸癌切除は概ね安全に施行可能であり、血栓塞栓症の発症も認めなかった。しかし、出血性合併症への対応に苦慮した症例も散見され、特に術後の抗血栓薬再開のタイミングや方法に関して、さらなる検討が必要である。