講演情報
[P3-7]抗血栓薬内服者に対する腹腔鏡下結腸切除術時の管理と結果
美並 輝也, 高橋 環, 島田 麻里, 金本 斐子, 道傳 研司 (福井県立病院)
【背景】近年高齢化社会に伴い,消化器外科手術における抗血栓薬服用症例は増加傾向である. 抗血栓薬服用者のうち, 周術期の血栓低リスク群は術前休薬を推奨されるが、中リスク以上は抗血栓薬を一部継続して手術を行うことがある. 消化器悪性腫瘍に対する手術時は血栓塞栓症の抑制と出血へのバランスをとることが極めて重要で, 鏡視下手術を含めた周術期抗血栓薬管理に関わる臨床指針は示されていないため,依然として施設間でのばらつきが大きいのが現状である.そのため, 当院大腸癌手術患者における周術期抗血栓薬使用の現状と出血・合併症などについて, 今回後方視的に検討した.【対象】2024年4月から2025年4月の間に行った腹腔鏡下結腸切除86例で, そのうち抗血栓薬服用者は20例(Th群),非服用者は66例(No群)であった. 抗血栓薬の内訳は抗血小板薬13例と直接経口凝固薬DOAC7例で,17例は術前休薬(抗血小板薬10例とDOAC7例)し, 3例はアスピリン継続した.No群は一般的な術後深部静脈血栓症予防として術後1病日から低分子ヘパリン皮下注を併用し,Th群は術後1病日から低分子ヘパリン,2病日から各々の抗血栓薬を再開した.【結果】患者背景はTh群の年齢(中央値 76歳/73歳; P=0.04)が有意に高かったが,その他の性別,BMI, ASA-PS,腫瘍の局在, c-Stageは両群に有意差を認めなかった.手術時間(213分/215分; P=0.599),出血量(5ml /5ml; P=0.181),術後1週目のHGB変化量(-1.3g/dL / -1.25g/dL; P=0.838)術後在院日数(8日/8日; P=0.592),術後輸血の有無やClavien Dindo分類IIIa以上の合併症やSSIの発症率は両群間で有意差を認めなかった.少数の抗血小板薬継続例も同等の結果であった.【結論】周術期における抗血栓薬休薬や抗血小板薬継続は周術期への影響は少なく,止血を丹念に行えば抗血栓薬非服用者と遜色ない結果と考えられた.