講演情報

[P30-2]やせ型大腸癌手術症例の術後合併症リスクとしての術前アルブミン値の意義について

玉井 皓己, 鄭 充善, 辻村 直人, 吉川 幸宏, 大原 信福, 赤丸 祐介 (大阪ろうさい病院外科)
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【背景】術後合併症のリスク因子として、肥満症例のみならずやせ型にも注目が集まっている。血清アルブミン(Alb)値は、栄養状態および免疫機能を反映する指標であり、低Alb値は術後合併症と関連することが知られる。肥満症例においては、慢性低度炎症(metaflammation)によりAlb値が低下し、これが予後不良と関連することが報告されている。一方、やせ型症例におけるAlb値の意義や術後合併症との関係についての検討は少ない。
【目的】大腸癌手術を受けたやせ型症例において、術前Alb値が術後合併症の発生に関与するかを検討する。
【対象と方法】2018年から2022年に原発性大腸癌に対する切除術を施行した1056例のうち、BMI≦18.5 kg/m2の124例を対象とした。術前Alb値を含む臨床因子をもとに、術後合併症の発生との関連を調べた。連続変数に対してはROC解析によりカットオフ値を設定した。
【結果】やせ型症例の年齢中央値は64歳で、男性82例/女性42例、ASA-PS分類で3以上が42例であった。腫瘍部位は結腸101例(81.5%)、直腸23例(18.5%)であった。Alb値の中央値は3.7 g/dLで、術後合併症は35例(28.2%)に認められた。Albに関するROC解析でのカットオフ値は3.5 g/dLであった。Alb値3.5 g/dL以下(低Alb)の症例では、術前因子としては75歳以上、男性、ASA3以上、脳血管疾患の既往が有意に多く、周術期因子としては出血量38 mL以上、開腹術、術後合併症発生例が有意に多かった。術後合併症発生のリスク因子として、単変量解析では75歳以上(p=0.01)、ASA3以上(p<0.01)、心疾患既往(p<0.01)、低Alb(p<0.01)、手術時間241分以上(p<0.01)、出血量38 mL以上(p<0.01)が抽出された。多変量解析では、心疾患既往(OR: 6.20, p=0.02)、低Alb(OR: 8.43, p<0.01)、手術時間241分以上(OR: 8.61, p<0.01)が、独立した術後合併症のリスク因子であった。
【まとめ】やせ型の大腸癌手術症例において、術前の低Alb値は術後合併症の独立したリスク因子となった。低栄養状態の評価は、体型にかかわらず周術期管理上重要であると考えられた。