講演情報

[P32-1]当院における一時的人工肛門閉鎖術における工夫と短期成績の検討

加藤 瑛, 山川 雄士, 加藤 潤紀, 浅井 宏之, 上原 崇平, 鈴木 卓弥, 牛込 創, 佐藤 崇文, 佐川 弘之, 髙橋 広城, 瀧口 修司 (名古屋市立大学消化器外科)
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【背景】
大腸癌症例の増加や肛門温存手術の増加により、一時的人工肛門が造設される機会が増加している。それに伴い、人工肛門閉鎖術の術後合併症の予防が重要となっている。当院では現在、術後合併症の減少を目的に、一時的人工肛門造設時には癒着防止剤を使用し、閉鎖時には筋膜をbarbed sutureを用いて連続縫合で閉鎖を行っている。また、閉鎖創部は環状縫合閉鎖を行い閉鎖陰圧療法を施行している。
【方法】
2020年1月~2024年12月に当院で一時的人工肛門閉鎖術を施行した88例を対象に、背景因子、周術期成績、術後合併症の発生状況について後方視的に検討した。
【結果】
一時的人工肛門閉鎖術は男性68例、女性20例で年齢の中央値は68(22-85)歳、人工肛門造設から閉鎖までの期間の中央値は227(14-1072)日であった。回腸人工肛門が69例、横行結腸人工肛門が19例であった。手術時間の中央値は93.5(47-175)分、出血量の中央値は18(0-151)mlであった。術後合併症は全体で30例(34.1%)あり、内訳はイレウスを13例(14.8%)、腸炎を6例(6.8%)、吻合部出血を5例(5.7%)、創感染を4例(4.5%)に認めた。術後在院日数の中央値は9(5-31)日であった。術後合併症に関して単変量解析を行った結果、手術時間が長いことが有意な因子であった(p<0.05)。また、術後合併症の発生は術後在院期間を延長させた(p<0.001)。創感染に関して単変量解析を行った結果、手術時間が長いこと、人工肛門造設から閉鎖までの期間が長いこと、横行結腸人工肛門が有意な因子として抽出され、多変量解析にて手術時間が長いこと(p=0.04)、人工肛門造設から閉鎖までの期間が長いこと(p=0.04)が抽出された。
【結語】
当院の一時的人工肛門閉鎖術における術後合併症発生率は34.1%であった。本研究では術後合併症の危険因子として手術時間が長いことが示された。創感染の危険因子として、手術時間が長いこと、人工肛門造設から閉鎖までの期間が長いことが示された。術後合併症の発生は術後在院期間を延長させるため、一時的人工肛門閉鎖術に際しては合併症発生のリスクを把握し、予防する工夫が重要である。