講演情報
[P32-3]一時的人工肛門の閉鎖までの期間に関する検討
高橋 玄1, 山本 陸2, 仲川 裕喜1, 濱田 篤彦1, 藤﨑 隆1, 安藤 裕二1, 村井 勇太1,2, 幸地 彩貴1, 十朱 美幸1, 高橋 宏光1, 百瀨 裕隆1, 土谷 祐樹1, 塚本 亮一1, 盧 尚志1, 本庄 薫平1, 石山 隼1, 杉本 起一1, 冨木 裕一1, 坂本 一博1,3 (1.順天堂大学下部消化管外科, 2.順天堂大学医学部附属静岡病院, 3.越谷市立病院)
背景: 直腸癌手術における一時的人工肛門(DS)は,術後縫合不全発生時の腹膜炎の軽減や再手術の回避などのメリットがある一方で,人工肛門形成状態による精神的,肉体的,経済的な負担は患者にとっては大きな問題である.DSを閉鎖するまでの期間は患者にとって大きな関心事であるが,それに関する報告は少ない.
目的: 今回我々は直腸癌手術で作成されたDSの閉鎖までの期間に関連する臨床病理学的因子を後方視的に検討し,閉鎖期間に影響を与える因子を明らかにすることを目的とした.
方法: 順天堂医院で2010~2021年に直腸癌に対して原発巣切除を施行した際に回腸のDSを作成した153症例を対象とした.閉鎖までの期間で早期群(EC, 半年未満)と晩期群(DC, 半年以上)の2群に分け臨床病理学的項目を統計学的に検討した.
結果: 全体の年齢中央値は64歳で,男女比は111:42で男性が多く,BMIは22.8kg/m²であった.抗凝固薬内服症例は13.7%,ステロイド投与症例は4.3%であった.術前治療に関しては,なし:CRT:NAC=102:19:32であり,pStageに関しては,CR/0:1:2:3:4=7:47:42:43:14であった.手術時間は408.5分,出血量は30ml,腹腔鏡:ロボットは94:59であり,側方郭清は,なし:両側:片側=121:28:4であった.DS閉鎖期間中央値は144日,Grade2以上の術後合併症は27.9%で認められ,内訳は縫合不全および,High output syndromeやOutlet obstruction syndromeなどのストマ関連合併症(SRC)であった.また病勢進行等により4例で閉鎖不可であった。次にEC(90例)とDC(59例)の2群で検討した.DC群では抗凝固剤内服(-)症例(p=0.04),pStage進行症例 (p<0.01),術中出血過多症例(p<0.05),術後化学療法症例(p<0.01),縫合不全症例(p<0.01)で有意に多かった.一方EC群ではSRC症例(p<0.01)が有意に多かった.DS閉鎖期間に関する多変量解析では縫合不全(p<0.01, HR: 4.72),SRC(p<0.01, HR: 0.15),術後化学療法(p<0.01, HR: 4.28)が独立した危険因子であった.
考察: 縫合不全はDS閉鎖期間を延長させ,SRCはDS閉鎖期間を短縮させた.DS閉鎖期間に影響する因子を念頭に置いた周術期管理と,患者とのコミュニケーションが重要であると考えられた.
目的: 今回我々は直腸癌手術で作成されたDSの閉鎖までの期間に関連する臨床病理学的因子を後方視的に検討し,閉鎖期間に影響を与える因子を明らかにすることを目的とした.
方法: 順天堂医院で2010~2021年に直腸癌に対して原発巣切除を施行した際に回腸のDSを作成した153症例を対象とした.閉鎖までの期間で早期群(EC, 半年未満)と晩期群(DC, 半年以上)の2群に分け臨床病理学的項目を統計学的に検討した.
結果: 全体の年齢中央値は64歳で,男女比は111:42で男性が多く,BMIは22.8kg/m²であった.抗凝固薬内服症例は13.7%,ステロイド投与症例は4.3%であった.術前治療に関しては,なし:CRT:NAC=102:19:32であり,pStageに関しては,CR/0:1:2:3:4=7:47:42:43:14であった.手術時間は408.5分,出血量は30ml,腹腔鏡:ロボットは94:59であり,側方郭清は,なし:両側:片側=121:28:4であった.DS閉鎖期間中央値は144日,Grade2以上の術後合併症は27.9%で認められ,内訳は縫合不全および,High output syndromeやOutlet obstruction syndromeなどのストマ関連合併症(SRC)であった.また病勢進行等により4例で閉鎖不可であった。次にEC(90例)とDC(59例)の2群で検討した.DC群では抗凝固剤内服(-)症例(p=0.04),pStage進行症例 (p<0.01),術中出血過多症例(p<0.05),術後化学療法症例(p<0.01),縫合不全症例(p<0.01)で有意に多かった.一方EC群ではSRC症例(p<0.01)が有意に多かった.DS閉鎖期間に関する多変量解析では縫合不全(p<0.01, HR: 4.72),SRC(p<0.01, HR: 0.15),術後化学療法(p<0.01, HR: 4.28)が独立した危険因子であった.
考察: 縫合不全はDS閉鎖期間を延長させ,SRCはDS閉鎖期間を短縮させた.DS閉鎖期間に影響する因子を念頭に置いた周術期管理と,患者とのコミュニケーションが重要であると考えられた.