講演情報

[P32-6]一時的ループストーマ閉鎖術における単純縫合閉鎖法の安全性・有用性に関する検討

村上 友将, 戸嶋 俊明, 矢野 雄大, 藤田 脩斗, 宇根 悠太, 大谷 朋子, 小西 大輔, 徳毛 誠樹, 小林 正彦, 村岡 篤, 國土 泰孝 (香川労災病院外科・消化器外科)
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【背景】一時的ループストーマ閉鎖術式は術中所見や執刀医の選択により様々である。当科では以前から腸管切除吻合(B)法(端々吻合や機能的端々吻合)による閉鎖術を行ってきたが、2022年より単純縫合閉鎖(A)法を取り入れた。腸管切除吻合法は一般的な閉鎖法ではあるが、辺縁血管を切離することがほとんどであるため、直腸癌にてIMA根部切離を伴う郭清後に横行結腸左側に一時的ループストーマを造設した場合は肛門側腸管の広範な壊死をきたす可能性があり注意が必要である。一方単純縫合閉鎖法では腸管壁を損傷しないよう丁寧に剥離する必要があり習熟した手術手技が求められるが、間膜切離が不要である点などから手術時間や出血量の減少に寄与する可能性がある。
【対象と方法】2022年4月から2025年3月までの当院でストーマ閉鎖術を行った28例について、患者背景、手術・術後因子を後方視的に検討した。
【結果】単純縫合閉鎖(A)群が10例、腸管切除吻合(B)群が18例であった。ストーマ腸管は回腸17例(A群7例、B群10例)、結腸11例(A群3例、B群8例)であった。手術時間(中央値)はA群76(58–116)分、B群115(73–200)分とA群で有意に短かった(P<0.05)。出血量はA群5(0–40)ml、B群25(2–300)ml、術後在院日数はA群12(8–19)日、B群13(9–38)日であり、いずれも有意差は認められなかったが、出血量はA群で短い傾向にあった(P=0.065)。Clavien-Dindo分類Grade II以上の術後合併症はA群1例(尿路感染(II))、B群4例(CDAD(II)、麻痺性イレウス(II)、SSI(II)、縫合不全(II))で、A群に比べB群で合併症が多い傾向を認めた(オッズ比 0.17、95%CI: 0.02–1.56、p = 0.115)。
【結論】一時的ループストーマの閉鎖術式において単純縫合閉鎖術は、手術時間の短縮に寄与し、術後合併症も少ない傾向が認められたことから、安全かつ有用な選択肢となる可能性があると考えられた。