講演情報
[P33-4]回腸人工肛門閉鎖術後に生じた初回手術時の吻合部離開による縫合不全症例の検討
小野 紘輔, 中原 雅浩, 倉吉 学, 徳本 憲昭, 坂井 寛, 柳川 泉一郎, 大塚 裕之, 北村 芳仁, 松森 亮介, 大下 彰彦 (JA尾道総合病院)
[はじめに]回腸の一時的人工肛門は、将来閉鎖することを前提として造設され、原疾患としては大腸癌など様々な疾患がある。多くは吻合部の縫合不全を予防する目的で造設されるが、イレウスや術後縫合不全の治療目的に緊急で造設されることもある。一時的人工肛門はその目的が達成された後閉鎖されるが、閉鎖術後に稀ではあるが元の吻合部が離開し縫合不全にいたることがある。[目的]一時的に造設した回腸人工肛門閉鎖術を施行したのちに元の吻合部が離開し縫合不全に至った症例の臨床的特徴を検討すること。[対象]2017年1月から2024年8月までに当科で施行した回腸人工肛門閉鎖術108例のうち、初回手術時にstoma造設のみ行った症例2例を除く106例。[結果]106例(予防的人工肛門造設、以下予防群92例、治療的人工肛門造設、以下治療群14例)のうち、6例(5.7%)で元の吻合部の離開による縫合不全を認めた。縫合不全は人工肛門閉鎖後17(8-160)日で認め、5例で人工肛門再増設を要した。6例はすべて直腸癌の術後であり、内訳は、予防群後で2例(2.2%)、治療群後で4例(28.6%)であった。治療群後のなかで、縫合不全例4例と非縫合不全例10例を比較すると、基礎疾患や術前の栄養状態、人工肛門閉鎖までの期間などは両群で差はないものの、縫合不全例は直腸切除術で腸管切除時の切離回数が複数回である症例、吻合が機械吻合である症例が多かった。[考察]複数回の切離を要した直腸癌術後の縫合不全に対して、治療目的に造設した回腸人工肛門を閉鎖する際には、元の吻合部の離開による縫合不全がおこる可能性も考慮する必要があると思われる。