講演情報

[P34-1]潰瘍性大腸炎術後の回腸嚢炎に対し回腸ストーマ造設後にストーマ脱出を来した1例

橋本 拓造, 大津 亘留, 相場 崇行, 地原 想太郎, 安田 一弘, 釘宮 睦弘, 白鳥 敏夫 (大分市医師会立アルメイダ病院)
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ストーマ脱出は可動性ある腸管の存在下で腹壁とストーマの間隙に腹圧が加わることにより弛んだ腸管が押し上げられ徐々に脱出することで引き起こされる. 患者因子として高齢, 肥満, 腹圧上昇, 筋膜の脆弱性など, 手術因子としてはストーマ部位の過大な開口, 腹壁とストーマとの過大な間隙, 腹直筋外造設, 腹腔内造設経路, 腹壁への非固定などが報告されている. 今回, 我々は潰瘍性大腸炎術後の吻合部狭窄・回腸嚢炎にて回腸ストーマ造設後にストーマ脱出をきたした1例を経験したので報告する. 症例は80才男性. 59才時に大腸全摘および回腸嚢-肛門管吻合術が施行されている. 79才時より吻合部狭窄にて内視鏡的拡張術が複数回施行されていたが, 回腸嚢炎を契機とする高度炎症・低栄養にて紹介入院となった. 回腸嚢炎に対して経肛門的イレウス管による保存的加療が行われるも, 症状は改善に乏しく手術侵襲および全身状態を考慮して腹腔鏡下に回腸ストーマ造設術を施行した. 術後はCVポート造設による中心静脈栄養管理を要したが, 回腸嚢炎は改善し自宅退院となった. 退院から半年経過した頃よりストーマ脱出を認めるようになった. CTにてストーマ肛門側から回腸嚢までに著明な拡張を認め, ストーマ脱出は遠位側腸管内容のドレナージ不良による腹腔内圧上昇が原因と判断し手術を施行した. 右上腹部に造設されたストーマは腹壁-挙上腸管レベルで開大しており容易に脱出が認められた. ストーマ部より回腸嚢に至るまでの小腸は癒着が著明で一塊となっておりドレナージ不良の原因と推察された. これらの癒着を剥離しすべての腸管をfreeとして確認するとストーマ部分から回腸嚢上端までは120cmであった. ストーマ部腸管を切除しA-L吻合で再建してから左下腹部で回腸嚢上端より口側20cmで新規に回腸瘻を造設し手術を終了した. 術後遺残回腸嚢の病的拡張は来していない.