講演情報
[P37-1]術前診断が困難であった狭窄症状を呈した回腸憩室炎の1例
山下 晋也, 中村 賢, 江口 聡, 星野 宏光, 川田 純司, 水野 均 (日本生命病院消化器外科)
症例は手術歴の認めない79歳男性。四肢末端浮腫を主訴に受診し精査。腹部CT検査で回腸壁肥厚と浮腫を認め腸閉塞の診断であった。絶食のうえTPN管理、経鼻イレウス管を挿入し減圧を消化器内科で施行。炎症性腸疾患の可能性や3連痰検査陰性で結核排菌はないもののT-spot陽性であったこともあり腸結核の可能性も考えられた。狭窄部位評価のため経肛門的にダブルバルン小腸内視鏡検査を行い、狭窄部はびらん変化を伴う輪状狭窄を認め内視鏡通過は困難であった。同部で生検・点墨・クリップを施行し狭窄部生検結果は炎症のみであった。その際に施行したステップバイオプシー検査では炎症性腸疾患は否定的であった。腫瘍マーカーCEA、CA19-9は正常であったもののCA125が300.2U/mlと上昇しており、通過障害解除と狭窄原因精査目的に手術の方針となった。臍部に切開を加えて単孔式腹腔鏡下回腸部分切除術を施行。腹腔外で狭窄部回腸(バウヒン弁から口側約60㎝)を切除し機能的端々吻合を施行。吻合口側の小腸に狭窄がないことを確認し手術を終了した。術後経過は良好で第10日目に退院。病理組織結果では腹水検査のアデノシンデアミナーゼ正常、結核菌PCR陰性。切除標本で肉芽腫形成は認めず、周囲に仮性憩室が散見されること、漿膜下脂肪組織を中心にリンパ球の線維性結合組織の増生を認めることから回腸憩室炎が原因となった狭窄による腸閉塞であったと考えられた。回腸憩室炎による腸閉塞は比較的まれであり、若干の文献的考察を加えて報告する。