講演情報

[P37-5]宿便による大腸イレウスを経肛門イレウス管にて軽快できた2症例

宮永 克也, 古元 克好 (林病院外科)
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宿便による大腸イレウスは稀な疾患で、時期を逃すと穿孔、潰瘍、虚血、出血、敗血症、敗血症性ショックを併発し、死に至りかねない病態である。浣腸、下剤で保存的に改善しなければ、早急に内視鏡、イレウス管等で減圧処置、さらには全麻下の手術で腸管切除、人工肛門造設等を考慮しなければならない。今回、宿便による大腸イレウスにて、イレウス管挿入し、軽快に至った2症例を経験したので報告する。
症例1。63歳男性。既往歴:57歳、大腸ポリープ切除術。飲酒:日本酒1合/日、喫煙:なし。現病歴:以前より便秘症とのこと。最終排便は、3日前。2025年4月下旬、近医で、大腸内視鏡検査を予定し、下剤2L内服後、排便、排ガス無く、腹部膨満にて当院に救急搬送。腹部所見は膨満、軟。浣腸施行するも排便なし。腹部CT検査施行すると、S状結腸に宿便による閉塞性機転を認め、大腸イレウス状態であった。S状結腸内視鏡検査を施行し、イレウス管を横行結腸にまで挿入した。以後、多量に排便あり。翌日イレウス管を抜去した。翌々日、S状結腸内視鏡検査を施行した結果、異常は無かった。無事退院に至った。
症例2。37歳男性。既往歴:高校2年時に肝腫瘍(良性)で、手術(肝左葉切除術・胆摘術)。飲酒:機会程度、喫煙:20本/日。現病歴:2024年4月上旬、下腹部痛が出現。排便なし。疼痛増悪し、当院受診。腹部CT検査では、S状結腸に宿便充満し、同部より口側の腸管の拡張、壁の肥厚を認め、大腸イレウス、閉塞性腸炎であった。腹部所見は、膨満、軟で、圧痛を認めた。大腸内視鏡は通過が困難で、ガイドワイヤーも挿入不可で断念した。翌日、注腸を施行し、経肛門イレウス管は挿入できず、全身麻酔下で緊急手術を施行した。S状結腸に便塊充満、下行~横行結腸は拡張していたが、腸管虚血、狭窄もなかったので、可及的に便塊を肛門側へ押し出して、経肛門イレウス管を肛門より用手的に下行結腸まで誘導し、手術を終了した。術後は日々イレウス管を洗浄し、排便を確認し、経肛門イレウス管を抜去し、無事退院に至った。退院後、大腸内視鏡検査を行うと、下行~S状結腸に虚血性腸炎の回復期を認めた。