講演情報
[P38-1]上行結腸癌術後早期に生じた腸間膜脂肪織炎による腸閉塞の1例
黒田 昂宏, 岡本 和哉, 姜 建宇, 中村 利夫 (藤枝市立総合病院外科)
<症例>
70歳代男性。40年ほど前に十二指腸潰瘍の手術歴があり、術後腹腔内の脂肪塊が原因で腸閉塞となり脂肪塊を切除する再手術を受けていた。今回便潜血陽性を契機に発見された上行結腸癌に対して回盲部切除術D3郭清を施行した。腹腔内は高度に癒着を認めたため開腹手術で行った。吻合は機能的端々吻合とした。最終病理はT1N0M0 Stage Iであった。術後経口摂取を再開。当初は摂取良好であったが、1週間ほどで腹部膨満と吐き気を訴えた。触診上、右上腹部に弾性硬な腫瘤を触れた。採血上炎症反応の上昇は認めなかった。CTでは吻合部周囲の脂肪織濃度の上昇、軟部組織による腫瘤の形成、正常脂肪組織との間に線状の軟部陰影(pseudocapsule)を認めた。また腸間膜の炎症により小腸は圧排され通過障害を来していた。これらは腸間膜脂肪織炎の所見に一致した。確定診断のためCTガイド下に腫瘤部をcore needle biopsyしたところ、病理学的に脂肪細胞の変性とマクロファージによる貪食、反応性の線維化が認められ腸間膜脂肪織炎と確定診断した。イレウス管による減圧と絶食による保存加療を開始したところ、次第に通過障害の改善を認め腹部に触れた腫瘤も縮小していった。術後27日に経口摂取を再開し術後48日に自宅退院となった。退院後フォローアップで撮影したCTでは腸間膜の炎症所見は改善傾向を示した。
<考察>
腸間膜脂肪織炎は腸間膜脂肪織の非特異的炎症疾患である。外傷や手術後、自己免疫疾患との関連、腫瘍随伴症候群として生じることが知られている。症状は腹痛、発熱、排便習慣の変化が多く、所見として腹部腫瘤や腹部圧痛がある。腸閉塞、尿管閉塞やときに血管虚血も合併するとされる。確定診断には組織診が必要である。治療は基本的に多くが保存加療で軽快するとされ、手術による効果は限定的である。ステロイド投与を推奨する文献も見られるが投与量など確立したガイドラインはない。本例は40年前の手術後にも同様のイベントを起こしていたと考えられ、腹部再手術による再燃例として比較的稀な1例と思われた。本疾患について文献的考察を加え報告する。
70歳代男性。40年ほど前に十二指腸潰瘍の手術歴があり、術後腹腔内の脂肪塊が原因で腸閉塞となり脂肪塊を切除する再手術を受けていた。今回便潜血陽性を契機に発見された上行結腸癌に対して回盲部切除術D3郭清を施行した。腹腔内は高度に癒着を認めたため開腹手術で行った。吻合は機能的端々吻合とした。最終病理はT1N0M0 Stage Iであった。術後経口摂取を再開。当初は摂取良好であったが、1週間ほどで腹部膨満と吐き気を訴えた。触診上、右上腹部に弾性硬な腫瘤を触れた。採血上炎症反応の上昇は認めなかった。CTでは吻合部周囲の脂肪織濃度の上昇、軟部組織による腫瘤の形成、正常脂肪組織との間に線状の軟部陰影(pseudocapsule)を認めた。また腸間膜の炎症により小腸は圧排され通過障害を来していた。これらは腸間膜脂肪織炎の所見に一致した。確定診断のためCTガイド下に腫瘤部をcore needle biopsyしたところ、病理学的に脂肪細胞の変性とマクロファージによる貪食、反応性の線維化が認められ腸間膜脂肪織炎と確定診断した。イレウス管による減圧と絶食による保存加療を開始したところ、次第に通過障害の改善を認め腹部に触れた腫瘤も縮小していった。術後27日に経口摂取を再開し術後48日に自宅退院となった。退院後フォローアップで撮影したCTでは腸間膜の炎症所見は改善傾向を示した。
<考察>
腸間膜脂肪織炎は腸間膜脂肪織の非特異的炎症疾患である。外傷や手術後、自己免疫疾患との関連、腫瘍随伴症候群として生じることが知られている。症状は腹痛、発熱、排便習慣の変化が多く、所見として腹部腫瘤や腹部圧痛がある。腸閉塞、尿管閉塞やときに血管虚血も合併するとされる。確定診断には組織診が必要である。治療は基本的に多くが保存加療で軽快するとされ、手術による効果は限定的である。ステロイド投与を推奨する文献も見られるが投与量など確立したガイドラインはない。本例は40年前の手術後にも同様のイベントを起こしていたと考えられ、腹部再手術による再燃例として比較的稀な1例と思われた。本疾患について文献的考察を加え報告する。