講演情報

[P38-6]開腹操作を要した経肛門直腸異物の1例

長谷川 琢哉, 渡邉 真哉, 古田 美保, 會津 恵司, 小林 真一郎, 佐藤 文哉, 林 友樹, 清水 大輔, 川島 賢人, 伊藤 博崇, 川島 綾菜, 近松 雅文, 田中 智裕, 石田 直哉, 永田 萌々 (春日井市民病院)
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経肛門的直腸異物は性的嗜好などが原因で、肛門より異物を挿入し、抜去不可能となったものである。治療は一般的に内視鏡や経肛門摘出が第一であり、困難な症例でも、鎮静下に経肛門操作に加え、腹壁への愛護的圧迫にて抜去可能な場合もある。
しかしながら、無理な操作により、かえって異物による腸管損傷を引き起こしてしまう可能性もあるため、その場合には開腹手術を要する事がある。
今回我々は、経肛門的アプローチでの抜去困難により、開腹操作を要した1例を経験した。
症例は47歳の男性、既往歴は特になし。受診前日にシリコン製の玩具を挿入したが排出困難となった。1日様子を見ていたが排泄されず、近医を受診し、処置困難のため当院紹介受診となった。血液検査では炎症反応の軽度の上昇を認め、腹部CTでは直腸からS状結腸に及ぶ高吸収体を認めた。玩具はシリコン製であり鉗子で把持可能であったが崩れてしまうため、内視鏡下、非鎮静下での抜去は困難と判断し、全身麻酔下に抜去を試みた。用手的に下部を把持しつつ、潤滑剤を注入し、腹壁越し玩具の上部を圧迫したが抜去には至らず、開腹の上、用手的牽引に加え、結腸壁を直接圧迫することで抜去が可能であった。
開腹所見では腸管壁の損傷はなく、玩具は砲弾型をしており、結腸ひだと一体となることで牽引の際に結腸と一体に稼動してしまうため、抜去が困難な状態になっていた。
経肛門的に20×7.5×7.5cmの玩具が摘出された。直腸壁の損傷は認めず、術後経過は良好で第6日目に退院した。本症例を元に、経肛門異物に対する治療について若干の文献的考察を加えて報告する。