講演情報

[P4-1]当院での虫垂炎に対するマネージメント

植田 隆太, 澤村 成美, 竹山 廣志, 岡村 修 (市立吹田市民病院外科)
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【背景と目的】
虫垂炎の治療は抗生剤による保存的療法と手術に分けられるが,施設間でも治療方針に差があり,汎発性腹膜炎による緊急手術を除いて,ガイドラインで明確に治療が規定されている訳ではない。昨今,外科医不足が深刻な状況にあるのは周知の通りであるが,当院でも例外なく,一般的に虫垂炎などの手術を担当するケースが多い,レジデント等の若手外科医が不在で,緊急手術に対応する体制が揺らぎつつある。そこで,当院での虫垂炎治療の現状を把握し,今後の診療について再考することにした。
【方法と結果】
当院で2024年1月から12月の1年間に虫垂炎で外来または入院加療された患者125例を対象として検討した。外来では20例が治療されていたが,外来となった理由は炎症軽微13例,入院拒否7例であった。すべて外来で治療は完結しており,その後入院となった患者はいなかった。入院患者は104例で,保存的加療は37例,手術加療となったのは67例であった。手術が選択された理由としては糞石,患者からの手術希望が多かった。入院期間は保存的加療,手術加療で差がなかった。また,汎発性腹膜炎のため緊急手術となった症例は2例であった。
【考察と結語】
 一般的に手術適応とされる,糞石を有する虫垂炎は,当院でも患者が拒否した場合を除いてほとんど全ての症例に手術を施行していた。また,複数回罹患の患者も同様に,手術を施行している患者が多く,患者背景・病態に合った適切な治療選択が行われているものと考えられた。糞石などがなく,保存的加療,手術加療どちらでも治療可能と判断される場合に,患者の手術希望を理由として,初回罹患でも手術している症例が多くあった。これらに関しては保存的加療の高い成功率,また入院期間にも差がなかったことから,治療決定は患者との相談にはなるが,積極的に保存的加療を提案することも許容されるものと考える。これにより,緊急手術に対する体制が十分でない施設において,手術による負担が減らせる可能性がある。しかし,その際には虫垂炎再発の可能性に関して配慮しなければならない。