講演情報
[P4-2]当科における妊娠合併虫垂炎の治療成績
田地野 将太, 小菅 誠, 後藤 圭佑, 鎌田 哲平, 阿部 正, 高野 靖大, 武田 泰裕, 大熊 誠尚, 衛藤 謙 (東京慈恵会医科大学外科学講座下部消化管外科)
【目的】妊娠中の虫垂炎は、非典型的な症状や解剖学的変化などにより診断に難渋することも多く、また、重症化しやすい。そのため適切なタイミングで治療がなされないと母体への影響のみならず、流早産などのリスクが上昇するので、早期診断と手術も含めた治療介入が重要である。近年腹腔鏡手術による治療報告が散見されているが、その安全性・有効性については確立されていない。今回、我々は当院で経験した妊娠合併虫垂炎症例について検討した。【方法】2012年から2024年に当院にて治療を行った妊娠合併虫垂炎13例を対象に、治療成績などについて後方視的に比較検討した。【結果】年齢中央値32歳(29-38)歳、発症時妊娠時期は中期7例、後期6例であった。診断的画像検査は腹部超音波6例、MRIが5例、CT検査は2例において施行されていた。また手術法は開腹8例(このうち2例は帝王切開と同時切除)、腹腔鏡5例であった。手術は全て入院日もしくはその翌日に行われていた。術後合併症は開腹手術で2例(創感染および腹腔内膿瘍)に認めたが、いずれも保存的加療で軽快した。手術法間で合併症の発生率は有意差を認めなかった(p=0.48)。また、術後妊娠経過については、手術との関連は不明であるが、開腹の3例で異常分娩(不全子宮破裂、常位胎盤早期剥離、回旋異常による緊急帝王切開)を認めた。【考察】本検討においては、症例数が限られるものの、腹腔鏡下虫垂切除術は安全に施行可能であり、母児への影響が小さいことが示唆された。妊娠中期及び後期においても、ポート配置等を工夫すれば侵襲の少ない腹腔鏡にて安全に手術を行うことが可能と考えられた。【まとめ】妊娠合併虫垂炎の患者に対して手術加療を施行した症例について検討した。妊娠合併虫垂炎に対する腹腔鏡手術は安全に施行可能な手術方法であると考えられた。