講演情報

[P4-5]当院における虫垂癌の手術症例

桐山 俊弥, 竹内 啓将, 河原 樹, 大野 慎也, 多和田 翔, 末次 智成, 岩田 至紀, 渡邉 卓, 小森 充嗣, 田中 千弘, 長尾 成敏, 河合 雅彦, 國枝 克行 (岐阜県総合医療センター外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】
虫垂癌は消化管腫瘍の中でも比較的稀な疾患であり、臨床的特徴や治療戦略は症例ごとの個別対応が求められる。当院では2023年1月から2025年3月までの間に虫垂癌の外科的治療例を9例経験したため、臨床像と治療経過を後方視的に検討した。
【方法】
対象は2023年1月から2025年3月の間に、当院で病理学的に虫垂癌(低異形度虫垂粘液性腫瘍を除く)と診断された症例9例である。大腸癌データベースからこれら症例を抽出し、年齢、性別、発見契機、術式、病理組織型、病期、術後治療、再発の有無などを後方視的に検討した。
【結果】
症例の内訳は、男性4例、女性5例、年齢中央値は74歳(範囲:55〜88歳)であった。発見契機は虫垂炎を契機とするものが4例であり、そのうち2例は虫垂切除後の病理診断で明らかとなり、のちに追加切除が施行された。他疾患でフォロー中の偶発的発見が2例であり、いずれも無症状であった。残る3例は腹痛などの精査で診断されたがが、画像上卵巣腫瘍との鑑別に迷うものが2例含まれていた。術式は回盲部切除が6例、右半結腸切除が1例で盲腸切除が2例であった。これらのうち、腹腔鏡手術のみで完遂できたものが2例であった。病理組織型は高分化腺癌2例、中分化腺癌2例、低分化腺癌1例、粘液癌1例、胚細胞型腺癌が2例であった。病期は半数の5例がIV期であり、内4例に腹膜播種を伴った。第III期の症例2例は術後補助化学療法を施行とし、内1例は術後5ヶ月で肝転移・腹膜播種再発を来した。
【考察】
当院における虫垂癌は、その多くが虫垂炎の治療過程で発見されることが多く、粘液癌や胚細胞型腺癌など多様な組織型を含んでいた。手術は開腹手術を選択する症例が多かったが、炎症や播種の影響によるものと考えられた。診断時すでに播種を有している症例が多く、早期の段階でいかに診断するかが今後の課題である。