講演情報

[P40-3]直接作用型経口抗凝固薬が免疫学的便潜血検査の診断能に与える影響

濱田 康彦, 重福 亜紀奈, 中川 勇人 (三重大学医学部附属病院)
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目的】免疫学的便潜血検査(FIT)は、大腸がんスクリーニングに広く用いられており、その高い診断精度が評価されている。しかし抗血栓薬、特に直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)はFITの診断能に影響を与える可能性があるが、この影響に関する報告は一貫していない。本検討では、DOACの使用がadvanced neoplasia(AN)の診断におけるFITの陽性的中率(PPV)に与える影響を評価した。
【方法】当施設で、2015年から2024年にかけて大腸がん検診におけるFIT陽性に対して大腸内視鏡検査を受けた818名を遡及的に解析した。傾向スコアマッチングを用いて、DOAC使用者と非使用者におけるAN、advanced adenoma (AA)、浸潤癌、および全腺腫のPPVを比較した。また、ロジスティック回帰モデルを用いた感度分析を行い、DOAC使用とFIT診断能との関連について解析した。
【成績】ANの診断率はDOAC使用者で4.0%、非使用者で16.8%であった。傾向スコアマッチングによる解析の結果、DOAC使用者のANに対するPPVは非使用者と比較して有意に低下した(オッズ比 0.20、95%信頼区間 0.05-0.92、p = 0.038)、AA、浸潤癌、全腺腫に関しては有意な低下を認めなかった。また感度分析でも、DOAC使用によりFITのPPVが有意に低下していた(オッズ比 0.25、95%信頼区間 0.08-0.83、p = 0.024)。
【結論】今回の検討では、DOACの使用が、AN診断におけるFITのPPVを有意に低下させた。DOAC使用者においては、診断精度を向上させるため補助的な診断ツールを併用するなど代替戦略を検討する必要がある。