講演情報

[P40-4]肛門科外来におけるS状結腸内視鏡検査の有用性

佐井 佳世, 鈴木 康元, 岡本 康介, 米本 昇平, 酒井 悠, 松島 小百合, 鈴木 佳透, 紅谷 鮎美, 小菅 経子, 松村 奈緒美, 河野 洋一, 宋 江楓, 下島 裕寛, 國場 幸均, 宮島 伸宜, 黒水 丈次, 松島 誠 (松島病院大腸肛門病センター)
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【背景】肛門科外来を受診する患者は痔核・裂肛・痔瘻といった肛門良性疾患を有する者が大半を占めるが、中には直腸~S状結腸に腫瘍性病変を合併している者もいる。そして、それらの病変の中には直腸診や肛門鏡による診察では把握が難しい症例もあり、当院では出血や排便障害などの症状を呈する症例には積極的にS状結腸内視鏡検査(以下SS)を実施している。SSの有用性に関しては以前から報告されているが、今回、当院肛門科初診受診者を対象として改めてその有用性について検討した。
【方法】2024年1月~12月の当院肛門科初診受診者のうちSSを実施した症例(全大腸内視鏡検査(以下TCS)またはSSの経験例は除外)を対象とし、外来診察では発見できなかった直腸~S状結腸の粘膜下層以深浸潤癌(sm以深癌)のSSでの発見率および年齢との関連性について検討した。
【結果】当院肛門科初診受診者8673例のうちSSを実施したのは2890例で、TCSまたはSSの経験例を除外した1389例(初診受診者の16.0%)を対象とした。対象症例に実施したSSで発見した直腸~S状結腸のsm以深癌は58例で、27例(SS実施例の2.0%)は外来診察では発見できなかった(外来診察未発見率46.6%)。この27例のうち50歳以上は24例でSSでの発見率は3.8%(SS実施例は635例)であった。
【考察および結論】肛門科を受診する症例の中には外来診察のみでは把握が難しい部分に腫瘍性病変を有する症例があり、その中には生命予後を左右するsm以深癌も含まれる。大腸がん検診における便潜血陽性者(全例にTCS等による精密検査実施が求められている)からの直腸~S状結腸のsm以深癌の発見率は1.4%と推定されるが、これに対し出血や排便障害などの症状を呈する肛門科初診受診者からの直腸~S状結腸のsm以深癌発見率は2.0%(SSによる)と高く、特に50歳以上となると同3.8%(SSによる)と極めて高くなることから、肛門科外来におけるSSの有用性は非常に高いものと考える。