講演情報

[P40-5]肛門疾患術前内視鏡検査で新たに診断された大腸癌の臨床的検討

城後 友望子, 指山 浩志, 黒崎 剛史, 鈴木 綾, 高野 竜太朗, 川村 敦子, 川西 輝貴, 中山 洋, 安田 卓, 小池 淳一, 浜畑 幸弘, 堤 修 (辻仲病院柏の葉大腸・肛門外科)
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【背景】肛門疾患の中には、稀に大腸癌が併存していることがある。このような症例において、術前に十分な消化管精査を行わずに肛門疾患の手術を先行した場合、大腸癌の診断・治療が遅れるリスクがある。
【目的】肛門疾患で手術を予定した症例のうち、術前の下部消化管内視鏡検査で新たに大腸癌が発見された症例の臨床的特徴を明らかにし、内視鏡検査の意義について検討する。
【対象・方法】2019年7月から2024年12月までに当科で肛門疾患手術を予定し、術前に内視鏡検査を実施した3358例を対象とした。内訳は男性2377例、女性981例、年齢中央値は65歳(12-93歳)であり、術前診断は痔核1755例、痔瘻1420例、裂肛149例、肛門ポリープ34例であった。このうち、術前内視鏡検査で新たに大腸癌が発見された症例について、年齢、性別、臨床症状、術前診断、大腸癌の進行度、腫瘍占拠部位などの臨床病理学的因子を後方視的に検討した。
【結果】全体のうち23例(0.68%)で新たに大腸癌が発見され、早期癌は7例(内視鏡切除3例、外科切除4例)、進行癌は16例(外科切除15例、全身化学療法1例)であった。性別は男性16例、女性7例、年齢中央値は69歳(49-91歳)であった。術前診断別の大腸癌発見率は、痔核0.80%(14/1755)、痔瘻0.14%(2/1420)、裂肛3.4%(5/149)、肛門ポリープ5.9%(2/34)であり、裂肛・肛門ポリープ症例で発見率が高かった。進行癌症例(16例)における主な症状は、出血15例、脱出7例、疼痛5例、腫脹3例であり、便通異常(便秘、頻便、残便感)は10例に認められた。腫瘍占拠部位は右側結腸2例、左側結腸5例、直腸9例であり、直腸癌が最多であった。
【考察】本研究における大腸癌発見率は0.68%であり、一般に報告される便潜血陽性者の発見率(約2-3%)より低いものの、大腸癌検診の発見率(約0.15%)より高く、出血症例に限定していない本研究集団では妥当であると考えられる。診断の遅れは予後に重大な影響を与えるため、術前の内視鏡検査は非常に重要であり、特に出血や便通異常を伴う症例では大腸癌の可能性も念頭に置き、積極的に内視鏡検査を実施すべきである。