講演情報

[P5-4]脾彎曲部癌における副中結腸動脈領域リンパ節の検討

山岸 茂, 中川 和也, 太田 絵美, 伊藤 慧, 本田 祥子, 増田 太郎, 験馬 悠介 (藤沢市民病院外科)
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【背景】脾彎曲部癌において副中結腸動脈(AcMCA)が存在すれば支配動脈となるが、大腸癌取り扱い規約には領域リンパ節として記載はなく、その取扱いは明確ではない。
【目的】脾彎曲部癌におけるAcMCA領域リンパ節を臨床病理学的に解析し、AcMCA切離部位を検討する。
【対象と方法】2012年2月から2025年3月までに脾彎曲部癌に対し腹腔鏡下切除術を施行した80例のうち、AcMCA郭清を行った36例 (45.0%)を対象とした。AcMCA切離部位は、進行癌では根部、早期癌では膵下縁を原則とした。AcMCAリンパ節は主、中間リンパ節として一括して取り扱った。これらを対象として、リンパ節郭清個数、転移率を後方視的に検討した。
【結果】性別は男24例、女12例、年齢中央値は69歳(44-89)、BMI中央値22.9(17.0-36.2)、手術時間中央値277分(169-500)、出血量中央値20g(5-895)、開腹移行1例(2.7%)で、術後合併症5例(13.9%)に認め、術後在院日数中央値7日(7-36)であった。臨床病期はpStage I/II/III/IV:11/14/8/3だった。リンパ節郭清範囲と術式は、腹腔鏡下結腸部分切除が33例(91.7%)で、郭清範囲はlt-MCA領域+AcMCA領域:9例、左結腸動脈(LCA)領域+AcMCA領域:10例、AcMCA領域:14例であった。一方、lt-MCAからLCA領域まで郭清する結腸左半切除術は3例(9.1%)だった。リンパ節郭清個数中央値は17個(4-42)で、リンパ節転移率陽性症例は10例(27.8%)であり、傍腸管リンパ節:#221=7/35 (20.0%)、#231=2/13 (15.4%)、#AcMCA=1/36(2.8%)だった。Ac MCA領域リンパ節に限る検討では、術前画像診断で転移陽性例はなしと診断したが、病理組織診断ではリンパ節郭清個数中央値は6個(0-26)で、転移陽性を1例(2.8%)認めた。
【結語】今回の検討では、脾彎曲部癌における主、中間リンパ節としてのAcMCAリンパ節転移陽性頻度は低く、術前画像診断でリンパ節転移陰性の場合は、Ac MCA切離部位は膵下縁で切離することは妥当であると思われた。