講演情報
[P6-3]人工血管置換術後の狭窄型虚血性大腸炎に対し術中ICG蛍光法を用いて人工肛門造設を回避し得た一例
田島 麻姫, 阿部 正, 後藤 圭佑, 月原 秀, 鎌田 哲平, 高野 靖大, 武田 泰裕, 大熊 誠尚, 小菅 誠, 衛藤 謙 (東京慈恵会医科大学消化管外科)
【症例】70歳代男性。【現病歴】9年前に腹部大動脈瘤に対して開腹人工血管置換術施行。3年前にグラフト感染に対して人工血管切除および再置換術、2年前に人工血管抜去および右腋窩-両側大腿動脈バイパス術施行。その後、虚血性大腸炎に対して保存的加療を繰り返していた。1週間前からの左側腹部痛を主訴に前医受診。下部消化管内視鏡検査にて直腸に狭窄を認め手術目的に当院紹介となった。【下部消化管内視鏡検査】直腸(RS AV-20cm)に瘢痕化を伴うpin hole状のfiber通過不可能な狭窄を認めた。肛門側には明らかな虚血所見を認めなかった。【腹部造影CT検査】大動脈は両側腎動脈分岐部より末梢で途絶していた。両側内腸骨動脈に造影効果を認めなかった。右腋窩-両側大腿動脈バイパスにより両側総大腿動脈から末梢には造影効果を認めた。【手術所見】全体に高度の腸管癒着を認めた。術前に狭窄部の肛門側に施行した点墨を直腸(RS)に認めた。狭窄部を含んだ腸管約15cmを切除した。インドシアニングリーン(ICG)蛍光法を行い、口側肛門側それぞれの腸管切離断端の血流が保たれていることを確認しDouble stapling techniqueで腸管吻合を行ない、人工肛門造設を回避した。【術後経過】術後に麻痺性イレウスを認めたが保存的加療にて改善し第24病日に退院となった。【考察】本症例では、腹部大動脈とその後のグラフト感染に対する手術の影響により下腸間膜動脈および両側内腸骨動脈の血流が途絶していた。術前検査では、狭窄部より肛門側の直腸に虚血所見を認めなかったが、腸管切離操作により血行動態が変化し肛門側断端の血流が低下する可能性が否定できなかった。近年、臓器血流評価法として術中ICG蛍光法の有用性が報告されている。本症例においても、ICG蛍光法により肛門側の直腸の血流が十分に保たれていることを確認し、腸管吻合を行うことで人工肛門を回避することが可能であった。今回のように血流異常を伴う症例において腸管吻合を検討する際には、術中のICG蛍光法が有用であると考えられたため、若干の文献的考察を加え報告する。