講演情報

[P6-4]骨盤内動静脈奇形を合併したS状結腸膀胱瘻の一例

中山 瑶子, 谷川 航平, 川嶋 太郎, 門馬 浩行, 中川 暁雄, 小林 巌 (兵庫県立加古川医療センター)
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【はじめに】動静脈奇形(AVM)は、四肢や脳、肺、頸部、腎臓などに多く報告されているが、あらゆる部位で発生しうる。その中で骨盤内に発生する頻度は約3%と報告されている。今回骨盤内AVMを合併したS状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻の手術症例を経験したので報告する。
【症例】63歳男性。急性尿閉による精査にて膀胱腫瘍が疑われ当院泌尿器科紹介。結腸膀胱瘻が疑われたために当科紹介となった。MRI検査で結腸膀胱瘻を認めるとともに、術前の造影CT検査にて右内腸骨動脈-両側内腸骨静脈のAVMが認められた。AVMに対しては心不全症状などもなく、S状結腸膀胱瘻に対して腹腔鏡下S状結腸切除術ならびに回腸人工肛門造設術を行った。術後経過良好にて、2か月後に人工肛門閉鎖を行い、現在、骨盤内AVMの増悪やS状結腸憩室炎の症状の再発なく経過している。
【考察】結腸膀胱瘻の原因は、憩室炎が約2/3を占めるといわれている。結腸膀胱瘻自体も、近年は憩室炎の増加とともに散見されるようになったものの、結腸膀胱瘻は大腸憩室症の2%とされる比較的まれな疾患である。本症例もS状結腸憩室炎が原因で結腸膀胱瘻を発症したが、骨盤内AVMを合併した結腸膀胱瘻の症例は、本邦では報告されていない。本症例では、AVMは画像上偶発的に発見され、心不全などの臨床症状も認めなかった。術前の血管構築画像による評価において、今回の結腸膀胱瘻に対する瘻孔切除を伴うS状結腸切除は、直接AVMに操作が及ぶ可能性は低いと判断し、腹腔鏡下S状結腸部分切除を行った。本症例のように、術前にAVMの病変血管と手術操作の及ぶ血管との血流把握を行うことが、AVM合併症例に対しても安全な手術につながると考えられた。