講演情報

[P6-5]横行結腸癌術後に発症した回腸動静脈奇形に対して血管内治療が奏効した1例

吉田 泰樹1, 秋山 泰樹1, 山内 潤身1, 永田 淳1, 村上 優2, 平田 敬治1 (1.産業医科大学医学部第1外科学教室, 2.産業医科大学放射線科学講座)
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【はじめに】動静脈奇形(arterio-venous malformation;以下,AVM)とは先天性の脈管形成異常であり、毛細血管を介さない動脈と静脈の異常な吻合の集簇が特徴である。成因は先天性と考えられホルモン変化や外傷により増悪するといわれているが医原性AVMの報告は少ない。今回、横行結腸癌術後にAVMを発症し血管内治療(interventional radiology;以下、IVR)を施行した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
【症例】75歳女性、他院で横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸右半切除術を施行され、術後フォローの腹部造影CT検査で吻合部近傍の上腸間膜動脈末梢枝に3.8mm大の動脈瘤が疑われた。経過観察されていたが術後2年で6.7mmと増大傾向であり治療目的に当科紹介受診した。当院放射線科と協議し、患者への十分な説明のうえでIVRを施行した。血管造影で回結腸動脈終末部より3本の異常血管があり、回結腸静脈へ早期還流を認めた。また、同部位に静脈瘤を認めたことから、回結腸動静脈奇形に併発した静脈瘤と診断し、塞栓術を施行した。術後良好に経過し、3日目に退院となった。現在術後2か月で無再発経過中である。
【考察】医原性AVMの成因として、術中動静脈の直接損傷、刺通結紮や集簇結紮、仮性動脈瘤を伴う血管壁の感染が報告されている。本症例では術前CTでは明らかなAVMを指摘できず術後に感染徴候も認めなかった。結腸切除術の腸間膜処理の際に超音波凝固切開装置を使用しており温存血管壁の熱損傷が成因と考えられる。手術やIVRでの治療例が多いが内視鏡的止血術、無症状の場合は経過観察された報告もある。本症例は当初動脈瘤の可能性が高いと考えており、無症状であることやサイズが小さいことからも経過観察も選択肢であったが、増大傾向であったことや仮性動脈瘤の可能性も考慮しIVR治療適応と判断した。結果、AVMに起因した静脈瘤の診断であったが、IVR後の腸管虚血により腸管切除に至った報告もあり施術後は慎重な経過観察が必要である。本症例では速やかに診断、治療したことが奏効し術後経過も良好であったが、術中の適切な血管処理が発症予防に重要である。