講演情報
[P7-2]急性虫垂炎を契機に判明した虫垂起始異常の1例
藤田 敏忠, 太田 里菜, 折田 沙穂, 寺井 祥雄, 岸 淳彦, 藤田 恒憲 (兵庫県立丹波医療センター外科)
急性虫垂炎は日常診療でよく遭遇する疾患の1つである。腸回転異常などに起因する虫垂の位置異常に関する報告は多いが、今回我々は虫垂炎の手術時に判明した上行結腸から発生した虫垂起始異常の1例を経験した。同様の報告は、本邦では過去に1例しかなく非常に稀であり文献的考察を加え報告する。症例は6歳 男性。入院3日前より下腹部痛、発熱あり近医を受診。胃腸炎の診断で内服処方されるも症状持続し当院受診した。腹部CTを施行したところ、糞石を伴う虫垂の腫大あり、周囲に膿瘍の可能性を否定できない少量の液体貯留も認め急性虫垂炎、腹腔内膿瘍の診断で当院入院となった。腹部は平坦 軟で右下腹部に圧痛を認めた。採血ではWBC4920/μL、CRP16.85mg/dlと炎症反応を認めた。腹部症状は右下腹部に限局しており、抗生剤による点滴加療を開始した。腹痛が続き入院7日目の採血でWBC13690/μL、CRP11.58mg/dlと炎症反応上昇とCTで骨盤腔内に径7cm大の膿瘍を認めた。膿瘍の周囲は腸管に囲まれ穿刺ルートが確保できないため手術の方針となった。下腹部正中で開腹し、腸管の癒着を剝離し膿瘍のドレナージをおこなったのち盲腸を確認したが虫垂は認めず、回盲部の授動をおこなったところ回盲弁の肛門側縁近傍の上行結腸から起始する虫垂を認めた。虫垂の末梢側は炎症により融解壊死しており、残存虫垂を根部で結紮切離して切除した。術後経過は良好で8日目に退院となった。切除した虫垂の病理組織診断は急性壊疽性虫垂炎であった。虫垂炎の手術は時間外に経験の浅い医師が執刀することも多いと思われる。虫垂が通常の盲腸から起始しないことで手術時に混乱を招く可能性あり、術前画像の注意深い読影とともに今回のような虫垂起始部の異常も知識として持つ必要があると思われた。