講演情報
[P7-5]保存的治療が奏効した腸管気腫症の臨床的特徴
大﨑 真央, 植村 守, 竹田 充伸, 関戸 悠紀, 波多 豪, 浜部 敦史, 荻野 崇之, 三吉 範克, 土岐 祐一郎, 江口 英利 (大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学)
【はじめに】腸管気腫症は腸管壁の粘膜下層や漿膜下層に多房性あるいは直線状に気腫性嚢胞を形成する比較的稀な疾患であり、腸管壊死を含めた腸管損傷との関連が報告されている。さらに、門脈ガス血症を伴う場合は腸管壊死で認められる重篤かつ予後不良の徴候とされ、緊急手術適応の一つの指標とされてきた。しかし、画像所見に基づく診断概念であり、その原因となる病因本態には様々なものがあると考えられ、保存的治療が可能になる症例も多い。当院で経験した腸管気腫の臨床的特徴と治療成績に関して報告する。
【対象・方法】2020年1月から2023年4月までの間に当院で経験した腸管気腫症52例を対象とした。診断は腹部CT検査で腸管壁に沿って線状・嚢胞状の気腫像を認め腸管気腫症と診断された症例とし、症状、治療、患者背景などについて検討した。
【結果】年齢中央値は65歳(IQR 47.3-75)、男性50例(57.7 %)であった。症状は発熱11例、腹痛9例、下痢3例、嘔吐3例、腹部膨満3例、その他3例で、無症状が20例あった。併存疾患として消化器疾患14例、糖尿病11例、呼吸器疾患7例、心血管疾患8例、血液疾患5例、自己免疫疾患2例(重複含む)を認めた。並存疾患管理のために18例でステロイドが投与され、10例で免疫抑制剤が使用されていた。CT検査では、腹腔内遊離ガスを13例に認め、門脈ガス血症を8例に認めたが、腸管内容の漏出を伴う腸管穿孔は認めなかった。手術を施行したのは1例で、初回CTで門脈ガスを認めたが腸管虚血はなく保存的治療を行ったものの、翌日に腹水の増加を認めたため試験開腹を行い、腸管虚血を認めたため小腸部分切除を行った。残る51例には保存的治療が選択され、そのうち49例は軽快を示した。死亡例は2例であり、いずれも並存疾患の増悪が原因であった。
【結語】腸管虚血を認めない腸管気腫症に対しては保存的治療で改善が見込める可能性があると考えられた。
【対象・方法】2020年1月から2023年4月までの間に当院で経験した腸管気腫症52例を対象とした。診断は腹部CT検査で腸管壁に沿って線状・嚢胞状の気腫像を認め腸管気腫症と診断された症例とし、症状、治療、患者背景などについて検討した。
【結果】年齢中央値は65歳(IQR 47.3-75)、男性50例(57.7 %)であった。症状は発熱11例、腹痛9例、下痢3例、嘔吐3例、腹部膨満3例、その他3例で、無症状が20例あった。併存疾患として消化器疾患14例、糖尿病11例、呼吸器疾患7例、心血管疾患8例、血液疾患5例、自己免疫疾患2例(重複含む)を認めた。並存疾患管理のために18例でステロイドが投与され、10例で免疫抑制剤が使用されていた。CT検査では、腹腔内遊離ガスを13例に認め、門脈ガス血症を8例に認めたが、腸管内容の漏出を伴う腸管穿孔は認めなかった。手術を施行したのは1例で、初回CTで門脈ガスを認めたが腸管虚血はなく保存的治療を行ったものの、翌日に腹水の増加を認めたため試験開腹を行い、腸管虚血を認めたため小腸部分切除を行った。残る51例には保存的治療が選択され、そのうち49例は軽快を示した。死亡例は2例であり、いずれも並存疾患の増悪が原因であった。
【結語】腸管虚血を認めない腸管気腫症に対しては保存的治療で改善が見込める可能性があると考えられた。