講演情報
[P8-1]MLH1発現低下盲腸癌の近傍にLST病変を合併した1症例
上野 綸1, 吉松 和彦1, 矢野 修也1, 北川 集士1, 神原 啓伸1, 堀 昌明1, 東田 正陽1, 岡田 敏正1, 遠藤 俊治1, 藤原 由規1, 上野 富雄1, 塩見 達志2 (1.川崎医科大学消化器外科学, 2.川崎医科大学病院病理部)
【はじめに】SSA/PはSSLとほぼ同義語で用いられている。MLH1のメチル化にってMSI型大腸癌へ進展する病変として知られている。今回、盲腸癌近傍にMLH1の発現が低下した腺腫を伴うLST病変を合併した症例を経験したため、報告する。【症例】71歳、男性。多発性骨髄腫加療後の定期血液検査で貧血を認めた。精査の下部内視鏡検査で盲腸に隆起性病変とLST病変を認めた。生検でtub1を検出した。盲腸癌cT1bN0M0 cStageIに対して腹腔鏡下回盲部切除術をD2リンパ節郭清を施行した。病理結果は盲腸癌はpT3N0M0 cStageIIaであり、MLH1とPMS2の発現が低下していた。術後第9病日に退院した。一部低異型度の管状腺腫を合併していた。SSL部位ではMSS発現の異常はなかったが、腺腫成分ではMLH1とPMS2の発現が低下していた。術後2ヶ月間、無再発生存中である。【考察】SSLのうちadenoma様の異型をともなうものはSSL with dysplasia(SSLD)としてWHO分類に記載されている。合併症例は散発性MSI-H大腸癌との強い関連性を指摘されている。病理学的にSSLDとSSLと通常型腺腫の併存と鑑別はBRAF変異抗体との評価が有用であり、陽性であればSSLと診断できる。本症例は、BRAF評価はしていないが、MLH1のは発現が低下しており、MSI-H大腸癌と推定された。今後、同部位も癌化する可能性を考慮すると切除することが望ましいと考えられた。【内視鏡検査でSSLを認めた場合は、がんの併存も考慮した観察が必要であり、切除することが必要である可能性がある。