講演情報
[P8-3]同時性5多発大腸癌の1例
内田 史武1, 深野 颯1, 鄭 暁剛1, 大野田 貴1, 丸山 圭三郎1, 原 亮介1, 大坪 智恵子2, 田場 充2, 黨 和夫1 (1.NHO嬉野医療センター消化器外科, 2.NHO嬉野医療センター病理診断科)
症例は75歳の男性で,腹部手術歴はなく,高血圧症,2型糖尿病,陳旧性脳梗塞のため近医通院中であった.定期の血液検査で貧血を指摘され,精査加療目的に当院消化器内科を紹介受診した.下部消化管内視鏡を行ったところ,上行結腸の1型腫瘍と下行結腸の2型腫瘍を認め,いずれも腺癌の診断が得られた.また横行結腸肝彎曲部と,横行結腸肝彎曲部寄りの2ヶ所に腺腫内癌を疑うポリープを認めた.手術目的に当科を紹介受診した.腫瘍の局在から,一括してすべての腫瘍を含めて切除するか,2ヶ所切除とするかは術前に決定することが難しく,十分なインフォームドコンセントを行った上で術中に決定する方針とした.腹腔鏡で観察し,上行結腸癌は容易に視認確認できた.横行結腸の2ヶ所のポリープと下行結腸癌の対側には術前点墨を行っており,位置を確認したところ,横行結腸肝彎曲部寄りのポリープが想定していたよりも肛門側(横行結腸中央寄り)であったため,結腸右半切除と結腸左半切除を行うとなった場合,残存する横行結腸は20cmに満たず,非常に短くなると考えられた.以上から結腸亜全摘(小腸S状結腸吻合)を行う方針とした.回結腸動脈根部,左結腸動脈根部で血管処理を行ってD3郭清とし,横行結腸間膜を中間位で処理し,右側結腸からS状結腸の授動を完遂した.小開腹創から直視下に標本を摘出し,再検は機能的端々吻合で行った.術後麻痺性イレウスを認めたが保存的に軽快し,術後17日目に退院した.病理組織診の結果,上行結腸癌はtub2, T2(MP), N1a, Stage IIIa,Ly0, V0,下行結腸癌はtub2, T2(MP), N0, Stage I,Ly0, V1a,横行結腸の2ヶ所のポリープはtub1相当の粘膜内癌であった.また偶発的に虫垂にもtub1相当の粘膜内癌が検出され,計5ヶ所の同時性5多発大腸癌であった.上行結腸癌のマイクロサテライト不安定性は陰性であった.外来で術後補助療法(ホリナート・テガフール・ウラシル)を行っている.同時多発大腸癌のうち4個以上多発する頻度は0.07%とまれであり,文献的考察を加えて報告する.