講演情報
[P8-4]当科における根治手術を施行し得た原発性小腸癌8例の検討
南浦 翔子, 吉川 幸宏, 辻村 直人, 大原 信福, 玉井 皓己, 鄭 充善 (大阪ろうさい病院外科)
【目的】原発性小腸癌は比較的稀な消化管悪性腫瘍で、発生頻度は全消化管悪性腫瘍の3%未満と報告されている。また特異的な臨床症状にも乏しく、早期発見が困難であり予後不良な疾患である。その頻度の低さから診断方法や治療は未だ確立されていない。今回我々は当科における根治手術を施行し得た原発性小腸癌のうち、空腸癌と回腸癌についてその臨床的特徴を後方視的に検討した。【方法】当院で2011年4月から2025年4月までに手術加療を施行したStageⅢ以下の小腸癌8例を対象とした。【結果】年齢中央値は76歳(39-78歳)、男性5例、女性3例で、7例は有症状で悪心・嘔吐5例、腹痛3例、腹部膨隆2例、食思不振2例、黒色便1例であった。症状出現から手術までの期間は中央値1カ月であった。全症例で内視鏡検査(小腸内視鏡検査6例、上部内視鏡検査1例、下部内視鏡検査1例)で確定診断が得られている。原発部位は空腸5例、回腸3例であった。全例で根治手術を施行しており、術式は腹腔鏡下小腸部分切除術3例、開腹小腸部分切除術3例、腹腔鏡下回盲部切除術2例で、1例で術後補助化学療法を施行している。手術時間は151分(80-300分)、出血量は157ml(5-830ml)で、術後合併症は認めなかった。腫瘍径は49mm(20-95mm)で、組織型は高分化型4例、中分化型3例、低分化型1例、病期はⅡ期4例、Ⅲ期4例であった。観察期間中央値は3年6ヶ月(3ヶ月-5年)であり、1例で術後6カ月目に肝転移、腹膜播種転移を認めたが、全身化学療法にて病勢制御を得られており、全例生存している。【考察】原発性小腸癌は特異的な症状がなく、早期発見の難しい腫瘍であり、その多くが有症状とともに発覚し全例進行例であった。今回の検討において予後は比較的良好であった。再発例においても積極的な化学療法により予後改善につながる可能性が示唆された。今後症例を蓄積し、さらに検討していきたい。