講演情報

[P8-5]当科における家族性大腸ポリポーシスの現況と治療

栃木 透, 大平 学, 丸山 哲郎, 岡田 晃一郎, 平田 篤史, 丸山 通広 (千葉大学先端応用外科)
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当院では2008年2月に遺伝子診療部が発足し、連携して遺伝性疾患の診療にあたることができるようになった。近年では遺伝子パネル検査の普及により二次的所見として遺伝性疾患が見つかることもあり、その対応も注目されている。これまで当科で診療に携わった家族性大腸ポリポーシス(FAP)の現況と治療について報告する。
2004年1月から2025年4月までの期間において当科が診療に関わったFAP症例は32例であった。診断時年齢は31.5歳(0-68歳)。密生型1例、非密生型18例、AFAP8例であり、大腸癌の合併は20例で認められた。遺伝子診療部にて遺伝カウンセリングを受け確定診断をなされたものは13例であり、以前は臨床的診断のみが多く見られていたのに対し、近年ではその割合が増加傾向にある。治療としては、最終的に大腸全摘・結腸全摘例は24例であったが、部分切除や内視鏡的切除のみで経過観察している症例も6例あった。予後については観察期間中央値73.2か月で、22例69%では随伴病変を含め癌やデスモイドなどの病変がなく生存していた。死亡例はすべて癌死であり、大腸癌を伴う状態での当科初診時からの生存期間は中央値で約30か月であった。生存例の中には通院を自己中断して連絡の取れないものも9例32%に認められた。
下部消化管領域においては2020年より遺伝子パネル検査を開始してきたが、既知の遺伝性疾患を除き二次的所見のあったもので遺伝カウンセリング、遺伝子診断をおこない新たに見つかった遺伝性疾患はない。
FAPに対しては長期にわたるサーベイランスも必要であるが、院内および地域での診療体制の整備が重要であると考えており、その取り組みについても報告する。