講演情報
[P9-6]アメーバ性大腸炎を合併した直腸S状部癌の1例
沖村 駿平, 光藤 傑, 三上 城太, 梶原 淳, 木村 聡宏, 谷川 隆彦 (川崎病院)
【背景】アメーバ性大腸炎は比較的まれな疾患であるが、近年は性生活の多様化に伴い増加傾向にある。一方で、大腸癌にアメーバ性大腸炎を合併した症例の報告は少なく、診断や治療に難渋することが多い。本症例は、アメーバ性大腸炎を合併した進行直腸癌に対し腹腔鏡下前方切除術を施行した稀有な1例である。【症例】52歳、男性【主訴】便潜血陽性、腹痛【現症】男性との性交渉歴はないが性風俗店の利用歴があり、便潜血陽性及び腹痛を主訴に当院消化器内科を受診した。下部消化管内視鏡検査にて、直腸S状部に全周性狭窄を伴う2型病変を認め、生検により直腸癌と診断された。腫瘍の肛門側には浮腫状で白苔を伴うタコイボ様隆起と多発する糜爛を認め、内視鏡検体から細菌塗抹検査でアメーバが検出され、アメーバ性大腸炎の合併と診断された。【家族歴】特記すべきことなし【既往歴】うつ病、糖尿病、高脂血症【経過】腹部造影CTでは直腸壁の造影効果を伴う肥厚と腸間膜リンパ節の腫大を認めた。術前に10日間の抗菌薬治療後に点墨およびアメーバ腸炎の経過観察のため再度下部内視鏡検査施行した。腫瘍はさらに増大しスコープ通過が困難であった。腸炎に関しては前回認めていた肛門側の糜爛は消失していた。アメーバ性大腸炎の改善を確認し、腹腔鏡下前方切除術を施行した。病理診断はpT4bN0M0、StageⅡcであった。術後経過は良好で、第8病日に退院した。【結語】アメーバ性大腸炎を合併する直腸癌を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。