講演情報

[PD1-1]便失禁診療ガイドライン改訂第2版について

幸田 圭史1, 味村 俊樹2, 山名 哲郎3, 石塚 満4, 高橋 知子5, 高野 正太6, 安部 達也7, 西澤 祐吏8, 勝野 秀稔9, 佐藤 正美10, 西村 かおる11, 吉田 雅博12, 前田 耕太郎13 (1.帝京大学ちば総合医療センター外科, 2.自治医科大学附属病院, 3.JCHO東京山手メディカルセンター, 4.獨協医科大学病院, 5.医療法人鉄蕉会亀田総合病院, 6.大腸肛門病センター高野病院, 7.医療法人健康会くにもと病院, 8.国立がん研究センター東病院, 9.藤田医科大学岡崎医療センター, 10.東京慈恵会医科大学医学部看護学科, 11.コンチネンスジャパン株式会社, 12.国際医療福祉大学市川病院, 13.向日葵清心会青梅今井病院)
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第1版から7年ぶりに第2版が出版された。3年の年月をかけて完成した第2版の特徴について発表する。
本ガイドラインではまず診療アルゴリズムを設け、大まかな診療手順を示した。保存的治療のなかで臨床研究枠内として挿入型肛門・膣失禁装具が追加された。I章ではB有症率に関し、平均35歳の本邦の集団では肛門失禁が男性15.5%、女性42.7%と追記された。II章ではアセスメントとして排便日誌の有用性に初めて言及した。診察法では指診の評価方法につい詳述した。失禁関連皮膚炎を新たに加え、リスクと評価法を解説した。検査法IIIでは、従来に加え超音波検査で肛門管超音波、経会陰、経膣超音波検査に分け初めて詳述した。治療IVでは初期保存的治療として食事、排便指導、便失禁のケアについて項目を立てて解説した。薬物治療についても個々に項目を立てて説明した。骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法、経肛門的洗腸療法は「専門的保存的治療」として項目を分けて詳述した。外科治療の中で、CQとしてはじめて出産後の専門施設への相談時期につき、括約筋損傷がある場合には早期に、ない場合には1年様子をみてからが良いことが説明された。また出産時に括約筋損傷があった場合の次の出産方法についても、その後の排便状況を評価して考察するというCQを追加した。外科治療としてのストーマ造設は、最終手段の一つとして今回はその後のQOLを含めて詳述した。さらに特殊な外科治療として、初めて肛門括約筋再生療法をとりあげ、自己筋芽細胞を培養し外肛門括約筋に移植する試験でよい長期成績があると紹介された。最終章Vでは、特殊な病態として神経・骨髄障害、認知症、フレイル、寝たきり高齢者にみられる便失禁の病態と治療が詳しく解説された。
今回の改訂では、エビデンスレベルの高い論文や報告が必ずしも多くない便失禁診療について、診療経験の深い委員の間での突っ込んだ話し合いに時間をかけたが、各分野において明らかな点やそうでない点、また検査法、治療有効性についての現時点での評価など詳しく記載がなされており、今後の便失禁診療のよい手引きとなることと確信している。