講演情報
[PD1-5]温水洗浄便座による肛門洗浄は便失禁の要因である
角田 明良 (安房地域医療センター外科)
背景:温水洗浄便座(BT)の家庭における普及率は80%を超えている。BTの使用方法と肛門症状の関係を調査したところ,6%(156/2,534)の人が月に1回以上便失禁(FI)を経験していた(Tsunoda A. Environ Health Prev Med 2016) 。
目的:BTによる洗浄とFIの関係をみる。
方法:FI例でBTの洗浄方法について洗浄の頻度,洗浄の強さ,吐水の太さ,洗浄時間を2-4ポイントで段階付けした。患者は再診まで洗浄の中止を指導した。FI はFI Severity Index(FISI)で評価し,follow-up の FISI score が baseline の 1/2以下で実質的改善(SI)とした。患者に排便造影,生理学的検査を勧めた。データは中央値(範囲)で示す。
結果:FIを呈した85例(M/F:28/57)の年齢は75歳(37-92)で,FISI scoreは18(8-49)であった。洗浄の頻度,洗浄の強さ,吐水の太さ,洗浄時間,FISI scoreはおのおの有意な性差は認められなかった。baselineの排便頻度は8回/週(2-35) (n=78),便性状はブリストルスケールでタイプ1, 2, 3, 4, 5, 6, 7はおのおの1, 4, 5, 17, 36, 13, 0例(n=76),下剤の使用は塩類下剤10例,刺激性下剤4例,上皮機能変容薬3例,膨脹性下剤1 例,マクロゴール4例,使用なし53例(n=75)であった。生理学的検査は81例中50例 (62%)に行われた。安静時肛門内圧が40cmH2O未満,随意収縮圧が100cmH2O未満の比較的低圧の症例は,おのおの15例(30%),9例(18%)であっ た。排便造影は46例(57%)に行われ,直腸肛門重積または直腸瘤26例,機能性便排出障害が4例認められた。再診例は81例(95%)で,洗浄中止期間は4週(2-20週)であった。FISI scoreはbaselineよりfollow-upで減少し[18(8-49)vs. 12(0-43);p<0.0001],SIは46%(37/81)であった。follow-upでは38%(31/81)でFIが消失した。SIは随意収縮圧と,baselineのFISI scoreは洗浄の頻度と正の相関を示した。一方、SIの有無と併存疾患と既往歴の有無の間には有意な関係はなかった。排便造影所見の有無でも同様の結果であった。
結論:BTによる洗浄はFIの要因であることが示唆された。
目的:BTによる洗浄とFIの関係をみる。
方法:FI例でBTの洗浄方法について洗浄の頻度,洗浄の強さ,吐水の太さ,洗浄時間を2-4ポイントで段階付けした。患者は再診まで洗浄の中止を指導した。FI はFI Severity Index(FISI)で評価し,follow-up の FISI score が baseline の 1/2以下で実質的改善(SI)とした。患者に排便造影,生理学的検査を勧めた。データは中央値(範囲)で示す。
結果:FIを呈した85例(M/F:28/57)の年齢は75歳(37-92)で,FISI scoreは18(8-49)であった。洗浄の頻度,洗浄の強さ,吐水の太さ,洗浄時間,FISI scoreはおのおの有意な性差は認められなかった。baselineの排便頻度は8回/週(2-35) (n=78),便性状はブリストルスケールでタイプ1, 2, 3, 4, 5, 6, 7はおのおの1, 4, 5, 17, 36, 13, 0例(n=76),下剤の使用は塩類下剤10例,刺激性下剤4例,上皮機能変容薬3例,膨脹性下剤1 例,マクロゴール4例,使用なし53例(n=75)であった。生理学的検査は81例中50例 (62%)に行われた。安静時肛門内圧が40cmH2O未満,随意収縮圧が100cmH2O未満の比較的低圧の症例は,おのおの15例(30%),9例(18%)であっ た。排便造影は46例(57%)に行われ,直腸肛門重積または直腸瘤26例,機能性便排出障害が4例認められた。再診例は81例(95%)で,洗浄中止期間は4週(2-20週)であった。FISI scoreはbaselineよりfollow-upで減少し[18(8-49)vs. 12(0-43);p<0.0001],SIは46%(37/81)であった。follow-upでは38%(31/81)でFIが消失した。SIは随意収縮圧と,baselineのFISI scoreは洗浄の頻度と正の相関を示した。一方、SIの有無と併存疾患と既往歴の有無の間には有意な関係はなかった。排便造影所見の有無でも同様の結果であった。
結論:BTによる洗浄はFIの要因であることが示唆された。